実店舗は顧客に多くのメリットを提供しているが、デジタル店舗にもたくさんの利点があるものだ。
例えば家具やジュエリー、衣服、ペンキ、メガネなど、実店舗で実際にディスプレイすべきだと思う商品はたくさんある。というのも、これらを購入する際には、その商品がどんなものなのか実際に見て、触って、感じる必要があると思うからだ。しかしながら、創造性を持ってすれば、今やそうした製品のオンライン販売を成功に導く“デジタル体験”を生み出すことが可能であり、オンラインマーケットを販売の最高峰にすることもできるのである。
なぜ顧客が実店舗訪れるのかを理解する
顧客が椅子などの家具を買おうと思ったとき、ただ画像を見ただけでは、それがどの程度の硬さなのか、またどのような座り心地なのかは分かりづらいだろう。また、メガネを買いたいときは、フレームがどのくらいの軽さなのか、それが自分に似合うのかどうかを確認するために、実際に店を訪れるものだ。さらに、壁用のペンキが必要なときは、ペンキを店で直接見るのと、パソコン画面でチェックするのとは大違いである。特にスマホやパソコンの画面に映る色は、機器によってさえも違って見えるからである。
共通の問題点を解決する
デジタルメディアにおいて既に可能な解決策は、現実世界での体験を「真似る」「広げる」「越える」の3つに分類できる。
- デジタルプラットフォーム上で商品のサイズを把握するために、インド家具・インテリアのオムニチャンネル小売店Urban Ladderは、家具と一緒に人のシルエットを載せて大きさを比較しやすくしている。インドのアパレル企業Azaではモデルに服を着用させ、インドのジュエリーオンライン小売店BlueStoneでは、指輪やバングルを身に付けた人の標準化した画像を尺度として載せている。さらに、インドのメガネ・コンタクトレンズのオンライン小売店Lenskartでは、10ルピー紙幣を物差しがわりに示している。
- 大きさや質を把握してもらうために、身近な家庭用品と対象の商品を比較した詳細な画像を用いることができる。また、たとえば木製の椅子を手で叩いている人の動画は、それがどのくらいの硬さなのかを示してくれるかもしれない。
- 顧客にその商品が自身に合っているかを知らせるためには、様々なユーザタイプに対応した複数のモデルを使うのもよい。たとえばメガネであれば、顔のタイプを何種類かに分類し、それぞれのタイプの男女にメガネをかけてもらう。また、ペンキを選びたい顧客のためには、カラーチャートを用意し、色を選んでもらったら標準的な部屋のセットの中で一日の様々な時間帯にその色をチェックしてもらうこともできる。さらに、顧客自身の壁の写真をアップロードしてもらい、選んだ色をその写真に投影することもできるだろう。
- 製品の品質保証を示すためには、長い時間をかけて顧客からの評価を集めることがとても効果的だ。品質というものは、概して、発売当初よりも時を重ねていくにつれて向上していく傾向がある。従って、品質に関する評価は新着順に見られるようまとめるとよい。サービスに関しても、時と共に変化していくものなので、10個程度の最新評価を見やすく表示し、今現在どのくらいのクオリティなのかを示すのがよいだろう。
- 顧客が人気商品を好むタイプなのか、あるいは希少な商品を好むタイプなのかを見極める必要がある。人気があることに重点を置く顧客に対しては、いかに多くの人がその商品を購入しているかを示す必要があるし、希少性に価値を見出す顧客には、まだほんの少しの人にしか買われていないことを示すことで購買意欲をそそることができるだろう。
- 商品に何らかの問題があった場合に、カスタマーサービスと容易にコンタクトを取れることをユーザに知らせておくことも重要である。
問題すべてを解決する必要があるかを検討する
ほとんどの企業は時間や予算に限りがあるため、その問題が本当に解決すべきものなのかどうか、また解決に費やすコストが利益を上回ることはないかを見定めることは必要不可欠である。
例えば、ペンキの「色」にこだわることは、その「耐久性」にこだわることよりも重要なのだろうか。シャツ1つに対し7タイプの体型のモデルたちに着用してもらう必要があるのだろうか。こうした問題の対処法として、優先順位リストを作成することで、それをベースに最も重要な案件から取り組んでいくことができるだろう。
返品交換ポリシーの確立
購入の際に顧客が要視する大きなポイントの1つに、購入した商品を気に入らなかった場合、返品や交換が可能かどうかということがある。このポリシーがよりシンプルであればあるほど、顧客はより容易に購入の意思決定を下すことができるのだ。そこで企業側はそのポリシーを単に打ち出すだけではなく、購入プロセス同様それをうまく策定し、運用していく方法を見出さなければならない。
実店舗の限界を知る
実店舗は、顧客に多くのメリットを提供してくれるが、デジタル店舗にも多くのメリットがあることを覚えておこう。
- デジタル店舗では在庫を切らすことはほとんどないが、実店舗ではそれが起きやすい。
- 実店舗ではデジタル店舗ほど多くの商品をストックしたりディスプレイしたりすることはできない。
- デジタル店舗では必要に応じてバラエティに富んだ種類の品揃えが可能だが、実店舗ではかなり難しい。
- デジタル店舗は実店舗と比べて諸経費がかからないため、運営コストは実店舗よりかなり低くなる。
- デジタル店舗へのアクセスは広範囲から可能であるが、実店舗ではせいぜいその店まで車で行ける距離に住む顧客の利用までに限られてしまう。
以上のことを頭に入れ、顧客が必要と感じているあらゆることを可能な限り最良の方法で提供できるよう、ユニバーサルな商取引のアプローチ方法を考えてみるとよいだろう。
※当記事は米国メディア「Entrepreneur Asia Pacific」の10/26公開の記事を翻訳・補足したものです。