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ジャーナリズムとPRの揺れる境界線

ジャーナリズムとPRの揺れる境界線

マーケティング
2018/08/16

ジャーナリズム(報道、解説、批評などを行う活動)とPR(宣伝広報活動)の境界線は、曖昧になり得るものだ。そして、報道機関がこの問題に取り組み始めてからはかなりの時間が経過している。しかし現在、ユーザーの飽くことのないコンテンツへの欲求を満たすため、アマチュアの記者集団を募集する出版社も現れており、その境界線はかつてないほど不明瞭になってしまった。

 

なぜこの問題が急激に深刻化しているかは、容易に理解できるだろう。記事への需要が高まる一方で、記事を書く人数が減少し、記事が生み出す収益も減っているのだ。その結果、最終的な収益アップを確保するために、疑わしい編集慣行を取り入れたビジネスモデルが生まれている。

 

そのような編集慣行の1つに、Webページを埋めるための寄稿者ネットワークの活用がある。特定のテーマについてある程度の専門知識を持つライターのネットワークは、コンテンツに対して報酬を支払わない、もしくは、無償に近い報酬しか支払わないような出版社にとって、非常に魅力的である。専門分野を持つライターにとっても、自分の署名入りの記事を著名な出版物に掲載できる機会を提供してくれる出版社は、同じように魅力があるのだ。

 

寄稿者ネットワークでは、主に自発的開示ポリシーによって寄稿者が精査されている。そのため、数年前にBloombergのコラムニストStephen Gandel 氏が、金融ウェブサイトへの寄稿者を調査した際に発見したように、寄稿者を起用する際の不正行為が横行しているのだ。

「過去約1年間において、Forbes.comAlpha SeekingWall St. Cheat Sheetなどを含むいくつかの金融ウェブサイトでは、特定の株式を記事内で宣伝することに対して、著者に報酬が支払われていた疑いがある記事を掲載している」と、Gandel氏は、2014年の Fortuneの記事に記述。

「該当する記事は、広告としてラベル付けされておらず、作者が取り扱ったテーマに対し、有償で記事を書いているという情報も開示していない」と同氏は述べた。

 

ジャーナリズムの“ネザーワールド”

Gandel氏の記事が出版された後も、状況は大きく変化していないようだ。

 

「金銭のやり取りが発生していることを明示せずに、ジャーナリストやライターに報酬を支払い、宣伝用のコンテンツを執筆させるという慣習は現在も横行している」と語るのは、オンライン出版物における「賄賂」についての調査を行い、2017年にオンラインメディアThe Outlineの3,000語にわたる記事でその結果を報告したJon Christian氏。

 

同氏は、記事内で顧客を宣伝し、内密な取り決めを維持するためにジャーナリストに報酬を支払う個人やマーケティング会社について、20名を超えるマーケティング担当者やジャーナリストなどに対しインタビューを行った。

 

ジャーナリストが賄賂を受領して書いた記事を掲載しているすべての出版社は、賄賂行為を禁じる厳しいポリシーを掲げている。しかし、ライターが出版社からの報酬を補填するために不正に金銭を受け取ることを、出版社が阻止していなかったことは明らかである。

 

Gandel氏は、次のように指摘する。「ジャーナリズムが死んでしまった社会では、ビジネスリーダーが金銭を支払い、自社の業界について記事を書かせることができる。PR担当者は、自分のクライアントに関連する話題を記事にすることを求められている。誠実さと独立性といった従来の規範は、暗く新しいメディア精神によって一掃され、見方によっては、非常に面白く、また非常に悲しい詐欺行為に置き換えられてしまった」。

 

デュー・デリジェンス

Payola(商品を宣伝してもらうための賄賂)は、記者に限られた問題ではない。フロリダ州タンパのJoTo PRなどのPR会社は、「アーンド」または「オーガニック」パブリックリレーションズといったサービスも提供している。「アーンドPR」とは、PR担当者のピッチしたストーリーを、ジャーナリストが補足し、出版用の記事にしたものである。

 

たとえば、アンケートに出資した企業は、自社の業界や消費者についてのインサイトを明らかした調査結果を公開することができる。そしてその調査結果が、業界のトレンド記事となることもある。

 

しかしここ数ヶ月、JoTo社のチーフエヴァンジェリストでありアンチPRストラテジストであるKarla Jo Helms氏によると、アーンドPRピッチについて不穏な事態が生じているという。

 

「より多くの出版社が、『もう、アーンドメディア(口コミで獲得した外部メディア)としての役割を担わない。350ドルを支払ってもらえれば、メディアで言及する。より高額の報酬で、記事を掲載することができる』と言い始めている」と同氏。

 

この問題は、JoToと取引がある出版社のほんの一部でのみ生じているとHelms氏は述べた。「配信チームと話をした際に、私の耳にも入ってきたことだ。医療およびヘルスケアの出版物で起こっている事態である」。

 

それらのメディアは、メディアに記事掲載の対価を支払っているメーカーのヘルスケア製品とサービスについて、デュー・ディリジェンスを行うことができるのだろうか?と、疑問を呈し、「メディアは、支払いを受けた相手に借りを作ってしまうだろう」とHelms氏は語る。

 

PR記事のパワー

報道機関が収益を上げる新しい方法を見出すと同時に、広告とメディアが編集する記事の区別は不明瞭になる場合もある。「PR記事」や「ネイティブ広告(メディアの記事やコンテンツと溶け込むように表示される広告)」の登場は、その一例である。編集されたコンテンツのように見えるフォーマットで、広告をパッケージ化し、あたかもアーンドPRのように見せている広告手法だ。

 

2016年に発表されたDartmouth College-Stanford University のヘルスケア関連広告に関する調査結果によると、 PR記事は広告の真実性に対する懐疑心と低い期待値を取り除くことによって、一部で消費者を欺くということに成功しているという。

 

よってPR広告は、明確に区別できるように表示されるべきである。The Seattle Timesが提供するピッチの体裁に関するメディアキットに言わせれば、さもないと広告主はトラブルを招くことになるとのこと。

 

「調査結果によると、PR記事はダイレクプロモーションよりも高いレスポンスを獲得するケースが多い。しかし、広告主は誤解や将来的な顧客の反発を避けるため、PR記事が商業的な記事であり、メディアによって編集された記事ではないことを明確に提示する必要がある」と、The Seattle Times。

「現在の懐疑的な社会では、完全な透明性を保たないと企業の評判に致命的なダメージを与える可能性がある」と同紙は言及している。

 

「自社が行なった行動を公開しない場合は、その行動に何らかの問題があると感じている、ということだ」と、JoToのHelms氏は付け加えた。

 

曖昧な境界線

ロサンゼルスのElizabeth Lampert PR社の社長であるElizabeth Lampert氏は、有料広告をアーンド広告のように見せることは、正しく利用された場合、効果的なツールとなる可能性がある、と述べた。

「PR記事は、映画などで自社の商品を宣伝するために有償で目立つ位置に配置する広告手法である“プロダクトプレイスメント”だと主張することができるだろう」。

「コンテンツを提供していると同時に、ネイティブ広告や広告PR記事も掲載している場合、欺く意図があったり、虚偽の情報を提供していると、境界線は曖昧になる」とLampert氏。

「PR記事のマーケットは、確かに存在している。コンテンツ主導の世界では、いかなるタイプのPRキャンペーンにおいても、PR記事を検討しなければならないのだ。現状では、ここまでがペイドメディアであり、ここからはアーンドメディアであるといった明確な境界線は存在しない。2つを融合させたメディアが活用されている」。

「PR会社にとって、PR記事を扱う上で難しい部分は、詐欺的な要素があるかどうかの区別がつかないという点だ」とLampert氏は付け加えた。

「広告があたかも編集コンテンツであるかのように、オーディエンスを騙そうする意図を持った企業だという消費者からの評判を得たくないはずである」。

 

ボストンのNortheastern Universityのジャーナリズム学部准教授であるDan Kennedy氏は、有償でのニュースや特集記事でのプロダクトプレイスメントについては、弁解の余地はないとしている。

The Return of the Moguls: How Jeff Bezos and John Henry Are Remaking Newspapers for the Twenty-First Century」の著者でもある同氏。「金銭を受領し偏った記事を書くことは、絶対に容認されるべきではない。しかし、理解はできる。ライターも、他の人間と同じように生きていくための収入を得なければなからだ」と語った。

 

「寄稿者に、報酬を支払わない(もしくは、ほとんど支払わない)メディア組織は、自ら蒔いた種を刈らなければならないだろう」と、Kennedy氏。「そのようなメディアが実際にこの問題に怒りを表明したとしても、信憑性はほとんどないからだ」。

 

※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の8/9公開の記事を翻訳・補足したものです。