EC業界ニュース・まとめ・コラム「eコマースコンバージョンラボ」

PPC広告キャンペーンでよくある5つの間違い

PPC広告キャンペーンでよくある5つの間違い

マーケティング
2018/06/06

 PPC(クリック課金型)を活用するすべてのマーケターに共通していることは何か?それは、誰もが人間であるということだ。そして、すべての人間がそうであるように、PPCマーケターも間違いを犯す。

PPCキャンペーンおける最も一般的な間違いは、簡単に修正することができる。さらにもう少し問題意識を持ち、より多くの時間と労力を費やせば、CPA(コンバージョン1件あたりにかかった広告費用)ではなく、ROI(投資収益率)に重点を置くという最適な戦略へ移行し、より望ましい結果を得ることができるだろう。PPCマーケティング活動全体へのアプローチ法を変更すると、コンバージョンへの到達プロセスを微調整してより高品質なコンバージョンを得ることが可能なのだ。

 

PPCマーケターは、結局のところ人間である。しかし、キャンペーン実施においてよくある共通の間違いを回避すれば、大量演算を処理するPPC専用マシンのように業務をこなすこともできる。PPCに関するスキルが合格レベルかどうかを知りたければ、以下の短いクイズに回答してほしい。

 

早速、気を引き締めて業務に取り掛かろう。キャンペーンにおける最も一般的な5つの間違いと、それらを強みに変える方法を紹介する。

 

  1. マーケティングが大まかすぎる場合

一般的なPPCマーケティングで発生するミスの1つに、リマーケティング用のリストがあまりにもおおまかで、適切にセグメント化されていないことが挙げられる。例えば、過去20日間にウェブサイトにアクセスしたすべてのユーザーを対象に、ブランド広告を用いてリマーケティングするのは、あまりにも大雑把であり、CVR(コンバージョン率)のアップに実質的な効果はない。

 

サイト訪問者が自社サイト内の特定の記事を読んだ場合、リターゲティングキャンペーンにおいて、それらの読者に対し付加価値を提供すること注力すべきだ。例えば、企業イベントやプライベート行事のケータリングサービスを提供する企業を考えてみよう。「企業イベントの計画方法」というタイトルの同社ブログページの記事を、20秒以上閲覧したサイト訪問者が、企業向けサービスに興味があるということは明白だ。したがって、一般的な広告でリターゲティングするのではなく、ビジネスイベントに特化した広告を表示する必要がある。

 

解決策:対象オーディエンスの規模を過度に重視してはいけない。オーディエンスリストを、少なくとも3つ、または、4つのセグメントに分類し、各セグメントに特化した価値提案をすべきだ。

 

  1. ソフトコンバージョンではなく、ハードコンバージョンを最適化している場合

PPCマーケターにとっての最大の課題の1つと考えられているのは、広告キャンペーンにおいて、十分なコンバージョンを達成するためのトラフィックや予算がない場合に、マーケティングファネル(コンバージョンに至るまでの一連のプロセス)の最下流(例えば、購入段階)におけるアクションをいかに最適化するかということであろう。

 

しかし実はそうではなく、ソフトコンバージョン、もしくは、マーケティングファネルの中上流のアクションを最適化するべきなのだ。そうすれば、行動予測を作成するために十分なデータを収集し、どの見込み客がファネルの下流へ進む可能性が高いかを判断でき、適切な戦略をたてることができる。

 

目標とするコンバージョンが、自社のセールス担当者とのデモセッションへのリードを生み出すことであるとしよう。課題は、最終段階のコンバージョンをどのように測定するかという点である。1つの方法は、ランディングページを特定の成果を達成するために最適化することである。つまり、高いエンゲージメントを示す行動(フォーム入力、動画の視聴、高いスクロールレート、長時間サイト閲覧など)を起こすユーザー向けに最適化するということだ。このような「よりソフトな」コンバージョンにより、プラットフォームにアルゴリズムを実装する余地が増える。そして、非常に意識が高いユーザーにリーチし、これらの優良顧客をファネル下流に導くことができる。

 

解決策:ソフトコンバージョンにつながる過程をトラッキングして、キャンペーンを最適化する。その後、行動データを使用してハードコンバージョンを促進することができる。

 

  1. 時間が経って完了するコンバージョンの価値を見落としている場合

例えば、広告キャンペーンを2週間実施したところ、CVR(コンバージョン率)が非常に低かったとする。この場合は恐らく、キャンペーンを終了させ、失敗事例として処理するだろう。しかし、すべてのコンバージョンは、キャンペーン実施中もしくは、即後に完了するわけではないのだ。

 

例えば、「クリックして、50ドル割引クーポンをダウンロード!」という特典を提供する自動車保険の更新キャンペーンを行っているとする。顧客は、クーポンをダウンロードしたかもしれないが、実際に利用したのはその2ヶ月後、その保険が切れる時かもしれない。この場合の最終的なコンバージョンは、キャンペーンが実施から2ヶ月経過後に達成されたことになる。

 

目標とするコンバージョンのタイプによっては、ユーザーのエンゲージメントとコンバージョンのプロセスに時間差が生じるケースがある。遅れて完了するコンバージョンを考慮せず即効性のある結果のみを測定し、キャンペーンを時期尚早に終了するということは、PPC広告キャンペーンにおいてよく見受けられる誤りである。

 

解決策:時間をおいて完了するコンバージョンの価値を頭に入れておこう。コンバージョンをより幅広い視点で捉え、データを分析することが大切だ。Google Analyticsの設定を、コンバージョン直前のクリックの測定から、最初のクリックの測定へ切り替えるなど、さまざまなアトリビューションモデルをテストすることもできる。

 

  1. 広い視野で見ていない場合

PPCマーケターは、さまざまなプラットフォームでキャンペーンを実施している。ソーシャルマーケティングとSEM(検索エンジンマーケティング)専門の部署がそれぞれ別れている場合もあるし、PPCマーケティング活動の各チャネルを担当する複数の代理店と協業していることもある。

 

いずれにしても、各キャンペーンと各プラットフォームを別々に分析している可能性が高いということだ。すべてのチャンネルを網羅できる単一のトラッキング機能はなく、すべてのインプレッションビューについて、どこで発生したか把握することは不可能だ。各PPCプラットフォームは、それぞれ独立したエコシステムである。しかしPPCキャンペーンにおいては、各チャネルが相互にどのように影響しているか、より大局的に考察する必要がある。

 

例えば、Instagramキャンペーン実施中にCTR(クリック率)が低いとする。ただし、このときにGoogleで進行中のブランドキャンペーンに与える影響を軽視するべきではない。ユーザーは、Instagram内のリンクをクリックしなかったかもしれない。しかし、過去数日間にInstagramに投稿された広告を見た影響で、Googleの検索広告をクリックした可能性もあるからだ。

 

もう1つの例は、動画の自動再生である。ユーザーが動画を数秒間だけ視聴しただけで、コンバージョンにはつながらないかもしれない。それでも動画がブランド認知度与える影響は大きい。動画のインプレッションは、バナー広告のインプレッションよりもはるかに高い効果があるのだ。PPC広告がより動画中心になり、インプレッションの実際の価値を測定することはさらに困難になっている。

 

解決策:キャンペーンのクロスチャネル効果を過小評価すべきではない。各チャネルのキャンペーンを個別に最適化する必要はあるが、より大局的に考察すべきだ。例えば、動画のインプレッションを詳しく測定し、他のチャネルのキャンペーンにどのように影響しているかを観察する必要がある。また、クロスチャネル施策に、ネイティブ広告(記事と広告を自然に溶け込ませた広告)を追加し、PPCキャンペーンの全体のROIを向上させるべきである。

 

  1. 除外リストを適切に管理していない場合

PPCマーケターであれば、除外リストの重要性を認識しているはずだ。除外リストを活用することにより、既存の顧客をターゲットにするのではなく、新規顧客獲得に注力することができる。PPCマーケターにとっての課題は、Cookieをベースとしたユーザー除外リスト作成から、より動的データに基づいた除外リスト戦略に移行することだ。

 

B2B業界のPPCマーケターは、営業部門がすでに契約を完了した特定のクライアントの従業員を、リターゲティングリストから除外する必要がある。Linkedinの場合、既存のターゲット設定を変更するか、またはABM(アカウントベースマーケティング)除外リストをLinkedinプラットフォームへアップロードすることによって、特定の会社の従業員をリストから除外することは簡単だ。しかし他のプラットフォームではそれほど単純ではない。しかし、方法はある。例えばIPベースの除外リストを作成し、Google検索広告、または、ディスプレイ広告キャンペーンにアップロードして、既にクライアントである企業の従業員を除外することができる。

 

B2C業界において、eコマースストアを運営しているとしよう。商品が購入される度に、購入者を既存の顧客としてデータベースに追加し、名前、電話番号、電子メールアドレスなどの顧客データを所有することになる。これらのデータは、Facebook、そして今やGoogleの除外リストでも使用可能である。(たとえば、年間購読の)スポット購入の場合は、購入済み顧客の除外リストを作成しよう。そうすれば、購入済み顧客には、別の商品やサービスでリターゲティングすることができる。一方で、キャンペーンは、新しい顧客獲得に集中して実施することができる。

 

解決策:どの事業者も大量のユーザーデータを獲得している今の時代。Cookiesと併せて、データに基づいた除外リストを活用し、さらに有効な顧客獲得戦略を生み出すべきだ。

 

例えば、PPCに精通しているマーケターであっても、PPCは常に変化し新しいトレンドやツールが登場するため、注意を払わなくてはいけない。前述のガイドラインに従って、PPCとパフォーマンスマーケティングに関する最も一般的なトラップを回避すべきである。

 

まとめ:PPCキャンペーンにおける5つの一般的な間違い

  • リマーケティングリストがあまりにも大雑把だ。オーディエンスリストを少なくとも3つのセグメントに分類し、各セグメントに応じた個別の価値提案を行おう。
  • ハードコンバージョンの最適化よりも、ソフトコンバージョンの最適化がより有効である。その次に、より高品質のリードを購買ファネルの下流まで導くことに注力すればいい。
  • キャンペーン実施から、時間が経過して完了するコンバージョンもカウントする必要がある。コンバージョンについて、より大きな視点で捉え、データをテストしよう。
  • チャネル毎に個別にキャンペーンを最適化すべきだが、より大局的に考察すべきである。
  • 顧客データを活用して、Cookieベースの除外リストに加えて、動的データに基づいたリストを作成しよう。

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の5/29公開の記事を翻訳・補足したものです。