国際的にさらなる注目度を高めるインドのスタートアップ企業。2018年4月には、Twitterの共同設立者Biz Stone氏により、人工知能で動くチャットボットを使って患者と医師をつなぐニューデリーの医療スタートアップVisit社が投資を受けている。
そして今、気は熟している。というのも、米国最大級のスーパーマーケットチェーンのWalmartはインドの“かつての”スタートアップ企業であったeコマースの大手Flipkartの75%の株式を、150億ドルもの額で購入。この契約でWalmartは、インド最大のライバルを買収することに関心を示していたeコマース大手Amazonと熾烈な争いを繰り広げているのだ。
TwitterやWalmartによるこれらの取引は特別な事ではない。ここ最近、多国籍企業は自国のスタートアップへの投資や買収に多大な興味を示している。近年、Appleはハイデラバードに本拠地を置く機械学習のスタートアップTuplejumpを買収。またTwitterは、バンガロールの不在着信マーケティングプラットフォームZipDialを、Googleはディープランニングと機械学習システム構築に焦点を当てたバンガロールのHalli Labsを買収している。尚、インドのスタートアップを組み入れた最初の多国籍企業は、2014年にテスト分析ツールのメーカーLittle Eye Labsを買収したFacebookである。
この傾向はインドのスタートアップやエコシステム全体にとって非常に好ましいものだ、と起業家や投資家は口をそろえる。
インドの不動産会社Brigade Real Estate Accelerator Programme (REAP)の在職指導者Apul Nahata氏によると、「外国人投資家がインドに関心を持つのは、モバイル革命によって支えられた消費者の成長によると考えられる」という。「スタートアップは全く新しい市場を発掘するか、もしくは既存の市場や製品の隙間産業に参入するもの。外国人投資家にとっては、世界中の(スタートアップ投資への)足掛かりを増やすだけでなく、他の国でのスタートアップのソリューションを適用する良い方法だと考えている」。
さらにNahata氏は「多国籍企業は、インドのスタートアップとの連携や投資によって、経済に破壊的イノベーションをもたらすための技術的専門知識を活用することができる。巨大化する市場をターゲットにしているのだ。インドでのインターネットアクセスが充実し、スタートアップのエコシステムを支持する”Digital India政策”の取り組みによって、多国籍企業のこうした関心は増すばかりだ」と語った。
スタートアップにとって有名な企業との取引は、より高い評価を意味し、仕事の世界的な認知度を高めることになる。
Googleから投資を受けたオンラインファッションプラットフォームのFyndの共同設立者Harsh Shah氏は、以下のように語っている。 「こうした状況は、インドのスタートアップエコシステムにとって大きなプラスになっている。多くのベンチャーキャピタルによって、スタートアップが大胆な野心とビジョン持つことができ、実際エコシステムの推進につながっているのだ」。
より多くの資金があれば、起業家はリスクの高い計画を実行に移すという自由を手に入れられる。「資金不足は、堅調な資本市場と強力なIPO(新規公開株)の恩恵を受けられず、多くのインドのスタートアップの成長を妨げるボトルネックになり得る。多国籍企業がインドの新興企業に価値を見出すことは、起業家の実質的な後押しになり、ESOP(従業員による株式所有計画)の現金化を可能にし、それがエコシステムをさらに強固にしていく」と語るのは、連続起業家でエンジェル投資家(創業間もないスタートアップに資金を供給する富裕層)兼ECサイトShopCluesとオンライン中古車市場Droomの創設者でもある Sandeep Aggarwal氏だ。
Nahata氏によると、たとえ多国籍企業が買収しなくても、技術的なスタートアップ企業はより大規模な投資を受けることができる方法があるという。それは「新規資金調達源だけでなく、研究開発とイノベーションに多額の投資ができる”大企業の中で働く”こと」だ。これは「スタートアップ企業にとって大きなメリットだ」と同氏。
こうした傾向は、スタートアップ業界における投資家の信頼を大いに高めている。「起業家が大胆な動き(投資)をすることで、エコシステムはますます強化されていくだろう」とAggarwal氏。
また、スタートアップが成功すると、その創業者は(逆に)自らエコシステムに還元することができると言う。
「やみくもに新しいスタートアップ企業に投資するだけでなく、知識と洞察をシェアすることが大事だ」とNahata氏。
また、専門家によれば、最も重要なのはこの分野の雇用創出が増えているということだという。外国からの投資は、運用やカスタマーサポート、テクニカルプロダクトマネージメント、マーケティング、ビジネス開発、法務などの雇用創出につながっている、とAggarwal氏は語る。
世界を股にかける
多国籍企業は、その国のスタートアップへの投資に非常に関心を持っており、もし買収に至らなくても、技術系のスタートアップに対して大規模な投資を行うだろう。より多額の資本を得られれば、起業家はリスクの高い計画を実行する自由を得ることができる。そして、この分野の雇用創出が増加すると専門家は見ている。
※当記事はインドメディア「DNA」の5/7公開の記事を翻訳・補足したものです。