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【米国】Facebook、若者に人気の投票アプリ「tbh」を買収。10代ユーザーの貴重なデータを入手

【米国】Facebook、若者に人気の投票アプリ「tbh」を買収。10代ユーザーの貴重なデータを入手

トレンド
2017/11/02

10代のユーザーに関する課題に取り組み続けているFacebook社。4年前、当時FacebookのCFOであったDavid Ebersman氏は「Facebookを日常的に利用しているユーザー数、特に若い10代のユーザー数が減少している」と認めた。その1ヶ月後、Facebookは10代の間で絶大な人気を誇る写真共有アプリSnapchatの買収に失敗したというニュースが流れた

eMarketer の記事によれば、Facebookは4年経った今も、10代のユーザー数の減少に歯止めをかけられていない。しかし今回は、10代に人気があり、今まで手に入りにくかった年齢層に関するデータを収集できるアプリの買収に成功したのだ。

Facebookはtbhと言われる10代の若者に人気の“投票アプリ”を買収した。Facebookの広報担当者はアプリの買収額、及び売上計画ついては非公表にすると発表した。

2017年8月に公開されたtbhはアメリカ在住のiPhoneユーザーのみが利用可能で、友人に関するポジティブな質問をユーザーが匿名で答えるというアプリ。まずこのアプリはユーザーの電話に登録されている連絡先とデータベースを相互参照して、どの友だちがtbhを使用しているか確認する。そして、「商標登録すべきほど独創的な人は?」「ドレスの背中のファスナーをいつも上げてくれる人は?」「最高のハグをしてくれるひとは?」などの質問に対して、ユーザーは表示された4人の友人の中から最もふさわしい人を選ぶのだ。

FacebookのCorporate and Financial Communications部門のディレクターVanessa Chan氏はメールで「tbhとFacebookは共通のゴールがある。それはコミュニティーを作り、人々をより密接につなげていくことだ。それを実現するために投票とメッセージ機能を使うtbhのやり方に感銘を受けると共に、Facebookのリソースがあればtbhはより一層サービスを広げられ、ポジティブな経験を積む事ができるだろう」と回答している。

Facebookがtbhを買収したかった理由は明確である。同社は、Snapchatである程度起こっているような10代の間で人気のある別のアプリとの広告予算を巡る競争を望んでいない。2017年10月16日(月)に売却の発表をしたtbhのブログ記事によると、この数週間で500万以上の人がtbhをダウンロードし、10億件以上のメッセージが送信されたという。

Facebookが買収に使った資金を、今後アプリからどのように回収していくのかについては多少不明な部分がある。例えば「いつもお腹がすいていて、スニッカーズを必要としている」のようなスポンサーがついた質問を作ることは可能だが、ユーザーをしらけさせるリスクがある。このアプリではある一定の数の質問に答えたユーザーをロックする機能があるので、そのロックを解除するために広告を表示するか、スポンサーが付いた質問に答えるかの選択肢を与えるということは可能であろう。

ただし、価値があるアプリだと証明するために、Facebookはtbhからすぐに収益を得る必要はないと考えられる。Facebookは、友人や家族との人々のつながりを見つけ出す力を活かし、ビジネスを構築してきた。これらは人々が写真に友人をタグ付けしたり、家族の写真にコメントをつけたり、交際のステータスを公開するなど関係性に関するデータをFacebookに提供することで、より一層加速してきた。しかしティーンの若者の利用が減り、彼らの関係性に関するデータが少なくなる。これでは若者にFacebookを使ってもらうためのネットワーク効果が脅かされることになる。だからこそtbhがここに入り込めたのだ。

tbhはFacebookにとって、特に価値のある二種類のデータを提供できる。

まず、tbhに登録する際、電話番号と電話帳へのアクセス許可が求められる。恐らくtbhはこのデータをFacebookに提供すると考えられる(WhatsAppを買収した時と同様)。Facebookはその電話番号が利用中もしくは退会済のFacebook,Instagram,MessengerとWhatsappのアカウントと紐付けされているかを調べる事が出来る。たとえいずれのアカウントにも紐づけされていなくても、多くのユーザーは電話帳へのアクセスを許可しているので、どのユーザーとユーザーが繋がっているのかは知る事ができる。そこでFacebookはこれらの推測できる関係性を用いて、友人たちのデータ(興味などの)に基づくその人のプロフィールを、三角測量することができる。また、AppleやAndroidの端末用広告掲載IDを使い、様々なアプリ内でFacebook Audience Networkというモバイル広告ネットワークを通した広告を、その人向けに打つ事が可能である。

次に、人々がtbhを利用すると、友人との関係性を詳しく知るために役立つデータを提供することになる。例えば「ドレスの背中のファスナーをいつも上げてくれる人は?」という質問はつまらない質問に思えるが、この答えはリストに出た友人とはどれほど関係性が強いのかもしくは弱いのか示す。友人同士の関係性を比較することができるが、FacebookやInstagramのフィードではどの投稿を優先的に表示するのかで既に使われている技術だ。

BuzzFeedのクイズに全て答える」という質問は一見重要ではないように見えるが、その答えに選ばれた友人はBuzzFeed、クイズに加え、自分自身のことを深く知る事に興味があるということを示し、それはプロフィールに紐づけることができる情報だ。同じやり方で、Facebookはtbhのデータを使ってプロフィールを作りあげ、そのプロフィールに合った広告をFacebookやそれ以外の場所で掲載できるであろう。

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の10/17公開の記事を翻訳・補足したものです。