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越境ECで売れるモノとその理由 - データから見るポテンシャルと傾向

越境ECで売れるモノとその理由 - データから見るポテンシャルと傾向

越境EC
2015/07/10

越境ECで売れるモノとその理由 - データから見るポテンシャルと傾向

 

国境を跨いだオンライン上での商取引全般を指す「越境EC」。中国や米国のみならず、アジア圏への越境ECの市場は着実に拡大している状況だが、多くの事業者においてはそのような実感を得るに至っていないのではないだろうか。今回はそもそも越境ECで本当にモノが売れるのか、そしてどのようなモノが売れるのかを考えていく。

 

 

越境ECが拡大している背景

 

経済産業省の電子商取引に関する市場調査によると、昨年一年間で中国が日本のECサイトからの購入した金額は6,064億円で、対前年比55.4%も増加していることがわかった。米国の日本からの購入額が4,868億円で対前年比12.6%増という状況を考えると、中国からの越境ECは飛躍的に伸びているといえるだろう。

中国において越境ECが伸びている理由のひとつに、スマホの急速な普及が挙げられる。人口という母数の大きさはもちろん、近年話題になっている「爆買い」や訪日外国人旅行者のリピート購入なども相まって、大きな経済効果が引き起こされているのだ。

 

 

インバウンドからの示唆

 

越境ECの利用を拡大させるには、日本の商品を海外の国でPRして購入してもらうという方法ももちろんあるだろう。しかし、越境ECの大きな流れの一つとして、日本に訪れた観光客が興味を持ち、帰国した後にもう一度欲しいと思ったときに越境ECを利用するというケースがある。このケースの優れている点は、観光客自らが商品選定を行っているため、必然的にどの国に越境ECのポテンシャルがあり、売れる可能性が高い商品が何か、という示唆を得ることができる。

2014年の訪日外国人旅行者数は1,341万人(対前年比29.4%)と年々増加しており、政府は2020年までに訪日外国人旅行者数を2,000万人にすることを目標としている。つまり、このインバウンドの動きは今後さらに大きくなる可能性が高く、市場性も見込める。それでは、外国人観光客の日本での買い物の状況を見ていこう。

 

 

まずは外国人観光客が国・地域別で日本でどのくらいお金を使っているかを見てみる。観光庁の平成27年版観光白書によると、中国が5,583億円で27.5%を占め圧倒的に多いことがわかる。次いで台湾(3,544億円、18.5%)、韓国(2,090億円、10.3%)、米国(1,475億円、7.3%)、香港(1,370億円、6.8%)の順に多く、これらの国では日本からの越境ECのポテンシャルが非常に高いことが伺える。特に上位3ヶ国(中国・台湾・韓国)で全体(2兆278億円)の過半を占めていることからも現状の市場の可能性は一部の国・地域に偏っていることが推測される。またトレンドとしては、台湾・タイが増えており、韓国とアメリカは減っているようだ。

一方、外国人観光客の一人当たりの買い物に使う金額を見てみよう。こちらも中国が127,445円と他を圧倒。しかし2位以降はベトナム、ロシア、タイ、香港、マレーシア、台湾、シンガポールと続き、上述した消費総額とは異なる傾向が見られた。ベトナム、タイ、マレーシア、シンガポールなどにおいては、総額は少ないものの一人当たりの買い物額は大きいため、市場性は高いようだ。

 

 

越境ECで売れるポテンシャルのある商品とは? 

 

それぞれの国・地域で売れる可能性の高い商品には、どのようなものがあるだろうか。こちらも外国人観光客の国・地域別の品目別購入率から、越境ECで売れるポテンシャルのある商品はどんなものなのかを読み解いていきたい。

 

 

上図は観光客の当該商品ジャンルの購入割合(%)だ。アジアの国・地域は菓子類や電気製品、化粧品や医薬品などの購入率が高い。特に中国の購入率がどの品目においても上位となっている。一方、欧米の国は和服や民芸品、書籍やCDなど日本の文化と関連するものを購入しており、アジアと欧米における違いが大きく見られた。

 

品目別

菓子類をはじめとした食料品やたばこは、アジアのほぼ全域で人気があるということがわかる。外国人観光客に人気の商品の特徴としては、コンビニやスーパーマーケット、100円ショップなどで買える100円から300円程度の商品で、自分の国では買えない味のものである。特に抹茶味のお菓子が人気を集めているようだ。小分けになったお菓子はお土産として配るのに適しているという理由もあり、購入する観光客が多いそうだ。中国では白い恋人が「白色恋人」と愛称がつくほどの人気で、成田空港や福岡空港など北海道以外の場所でも飛ぶように売れている。北海道のお菓子ではなく「日本のお菓子」として非常に認知度が高いようだ。

次に人気なのは、服やバッグ、靴などのアパレル商品。アジアの人々は日本人と体型が似ているためか、よく購入されている。また、ユニクロのように海外展開しているブランドであっても、自国で購入すると関税がかかって日本ほど安くは購入できないため、関税がかからず、消費税も免税される日本で購入するという人もいるようだ。

化粧品・香水、医薬品や健康グッズ、トイレタリーは日本製への信頼から、「爆買い」されることが多い。化粧品は資生堂やコーセーなどが海外進出をして知名度があることから人気で、定評のあるロングセラー商品を指名買いして購入する人が多い。

家電量販店で外国人観光客に人気があるのはカメラや腕時計だ。ニコンやキャノン、セイコーやカシオといった日本のメーカーの商品が人気で、メイドインジャパンにこだわって商品を選ぶ観光客が多くみられるようだ。

 

国別

中国はどの品目においても他の国と比べて購入率が高くなっている。彼らは日本の製品に対して絶大な信頼や憧れがあるそうだ。中国人の買い物の特徴は「爆買い」「指名買い」。ドラッグストアなどで1つの商品を大量に買い物かごに入れている様子は、よくテレビなどで放映されている。自分用やお土産用として購入する人だけでなく、一部には割高で転売するために購入していく人もいるという。そして、観光雑誌の情報よりもSNSなどの口コミを信頼する中国人は、購入するものの写真をスマホで見ながら同じものを探すという人が多い。つまり、指名買いをする中国人には、安定的に口コミで評価の高いものでないと購入してもらえない可能性が高いのである。

ベトナム人にはカメラや時計、電気製品が特に人気だ。ベトナムに進出したイオンでは電化製品の売上が伸びており、日本の大手家電量販店もベトナムへの進出を企んでいるようだ。ベトナムは日本での買い物代が中国に次ぐ2位で、実はベトナムもかなり爆買いする傾向があることがわかってきた。また、100円ショップの利用が多いようだ。

タイでは化粧品が人気を集めている。タイは美容大国とも言われているため、納得だ。それに伴って、買い物場所は百貨店・デパートの利用が73.5%と他国と比較して最も多くなっている。

台湾では医薬品が人気だ。お土産として大量に購入する人が多い。台湾では主に日本の医薬品を販売するドラッグストアがチェーン展開されており、良く効くうえにパッケージがかわいい、と絶賛されているようだ。

香港ではアパレル商品が人気で、買い物をする場所は百貨店・デパートが多いことから、ブランド品を購入していると思われる。日本にはきちんとした正規品を求めて来ているのではないだろうか。

 

 

越境ECを成功させるために

 

現状にて越境ECを始める際には、ターゲットとなる国・地域をしっかりと選別し、そのターゲットをしっかりと攻めていくことが重要となってくる。間違っても、英語のサイトを公開しておけば誰かが見つけて買ってくれるだろう、というような安易な考えで海外向けECサイトを立ち上げるべきではない。

また、国内ECと比較して配送料・手数料が高額になるほか、関税などの規制もハードルになりやすい。越境ECでは販売先の国の法律が適用されるため、事前調査には念を入れておくべきだろう。国内ECとは異なり代金回収のリスクも無視できないので、セキュリティ面においても信頼できる業者や決済システムを選定するようにしたい。

 

 

データから見るポテンシャルと傾向

 

越境ECの成長の可能性を秘めているのは、東アジアを中心としたアジアの国・地域である。菓子類や電気製品、化粧品や医薬品などの商品が人気であることはデータからも読み取れるが、国による違いも大きい。越境ECをひとくくりに考えるのではなく、自社の商材が合うかどうかを国ごとに考えて展開していく必要があるだろう。

外国人観光客が日本で購入していく商品などの傾向などから読み取れる商品へのニーズは

  • 日本ブランドなど自国で買うより安いもの
  • 日本製などの信頼できる正規品
  • 日本でしか買えないもの

の3点に絞られると言ってもいいだろう。自国で同じモノが売っていたとしても、日本で買う方が安いため購入する、日本の方が正規品を取り扱っているから購入する。もしくは日本でしか売っていないモノを買う、という流れだ。

価格の例を見てみよう。中国の大手ECモールの天猫Tmallで日本の商品がいくらで販売されているかを比較すると、資生堂の口紅は日本の公式サイトでは3,240円(税込)で販売されているのに対し、天猫では260元(5,200円程度)、ユニクロのポロシャツは日本の公式サイトでは4,309円(税込)で販売されているのに対し、天猫では299元(5,980円程度)で販売されていた。(1元=20円で計算)円安元高の時期でさえこれだけの差がつくのだ。

 

 

国内のEC事業者が海外にオンライン販売すると配送料や手数料が国内ECよりも高くなり、トータルで見た際に低価格を実現するのは企業努力が必須となるが、特に日本ブランドを取り扱っている場合は価格優位性が最も重要なポイントになるのではないだろうか。当たり前のことではあるが、海外向けサイトでの販売価格を決定するには、自社の商材がその国のECサイトにおいていくらくらいで販売されているのかチェックすることは必要だろう。

また一方で綿密なマーケット調査やユーザー調査を行って大々的にスタートしても当たり外れが大きく、国内ECと比べてコントロールし切れない要素が多いのも事実だ。そのため、外国人観光客に協力を仰ぎスモールスタートしていくことも有効である。観光客に国内の量販店やドラッグストアなどで商品の目利きをおこなってもらい売れそうな商材を選定し、それをサイトに掲載してテストマーケティングを行うという流れだ。このサイクルを高頻度で行っていき国・地域別のニーズを把握することで、大まかな市場性を掴めるのではないだろうか。

また、中国向けとなるがECマーケットのトレンドデータを把握するためのNint for Chinaなどのサービスも出てきている。このようなサービスを事前にしっかり使うことで、オンラインでの売れ筋商品を把握することも可能となる。

為替レートが円安に振れており、中国や東南アジア各国のGDP成長により観光客と消費意欲が増加している今、越境ECのニーズが増していることは間違いない。越境ECで国内だけでなく海外へと販路を拡大していくためには、国・地域別のニーズをしっかり掴むことが成功の第一歩となるのではないだろうか。