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ECサイトはオムニチャネル化でどのように成果を出していくことができるのか

ECサイトはオムニチャネル化でどのように成果を出していくことができるのか

マーケティング
2017/05/19

ECサイトはオムニチャネル化でどのように成果を出していくことができるのか

 

オムニチャネル化がECサイトにとっても実店舗にとっても活路を見出す鍵となる、と言われてもう随分と長い時間が経ってきた。しかし、実店舗を持っているECサイト事業者は、O2Oやオムニチャネルが重要なのはわかるが、どのような施策を行い、どのように成果を挙げているのか分かりにくい部分が多いのも事実だ。今回はそのようなECサイトのオムニチャネル化について、施策のポイントを整理し、成果を挙げていくために必要な方法論を考えていく。

 

※当記事はオムニチャネル対応が可能なカートASPサービス「FutureShop2X」を提供するフューチャーショップ社から情報提供を受け、オムニチャネル成功に向けた方法論の一部を解説した記事である。

以下から当記事で紹介する事例などの詳細情報をダウンロードすることが出来ます。

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そもそもECサイトにとってオムニチャネルとは何か

 

オムニチャネルとは、実店舗やオンラインショップ、カタログ通販やダイレクトメール、ソーシャルメディアなど、すべて(オムニ)の販売経路(チャネル)を連携させることだ。最初、販売経路はシングルチャネルといって、実店舗と顧客という1つ(シングル)の販売経路しか持たなかった。次にマルチチャネルといって販売経路を多数(マルチ)化する考えが生まれたが、それぞれに繋がりはなかった。そこでオムニチャネルという考えが生まれ、販売がより効率的に行われるようになったのだ。

オムニチャネルという考え方は、2011年にアメリカの老舗百貨店、Macy’sのCEOが「オムニチャネル・リテイラーになる」と宣言したことで注目を浴びた。似たような考え方としてO2Oがあげられるが、O2Oとは、Online to Offlineの意味であり、ネット上からネット外へ影響を及ぼすことをいう。例えば、オンラインで配布したクーポン実店舗で利用するといった場合がある。O2Oは実店舗まで誘導する効率的な手段ではあるが、そこから長期的な顧客へと育てる手段ではない。そういった意味でオムニチャネルとは別物といえるだろう。

では、オムニチャネルはECサイトが浸透してきている今の時代に、どのような意味を持っているのだろうか。ECサイトは実店舗に行かずに購入ができるという点で便利ではあるが、一瞬でさまざまな店舗と比較ができるため、長期的な顧客へと育てることは難しい。その点オムニチャネル化した店舗ならば、その人にあった購入スタイルを選べるため、長期的な顧客へと育てることができるのだ。例えば、実店舗へ行き見た商品をECサイトで購入、受け取りはコンビニというような購入方法を好む人もいれば、ダイレクトメールで見た商品を実店舗で購入、家まで送ってもらうというような購入方法を好む人もいるだろう。このように、ECサイトだけでは得られなかった長期的な関係を顧客と作り上げることができるのだ。

 

 

オムニチャネルはどの程度の成果が見込めるのか

 

理論では分かっていても、なかなか数値的な成果を見てみないと導入が進まない事業者も多いだろう。ECサイトをオムニチャネル化することによって得られる利益を数字という観点から見てみよう。

Flowerの店頭風景

渋谷・原宿を中心にガーリーなレディースファッションを提案するFlower事例によると、ECサイトとの一元化を行った6月以降の6ヶ月間で、購入単価に大きな差はないが、購買回数に大きな差が出ており、店舗とECサイト併用利用者は4.1回、店舗のみの利用者は1.63回、ECサイトのみの利用者は1.55回と、併用利用者の購買回数が高いことがわかる。また、併用利用者は複数の実店舗で買い回っていたり、店頭のリピート率が2、3ヶ月に1回だったものが1.5回~2回に上昇したといった成果もある。

 

W closetの店頭風景

また、べーシックとシーズントレンドをミックスしたスタイリングを提案するW closet事例によると、全体の売上の割合を比較すると、ECサイトのみの利用者は10.6%なのに対し、店舗とECサイトの併用利用者は15.5%と上回っており、併用利用者の平均購入金額は店舗の2.2倍、ECサイトの3倍であることがわかる。また、店舗とECサイトの併用利用者はどちらか片方の利用者よりも購買回数が2.2倍~2.6倍と高い。このように、オムニチャネル化することによって着実に利益を上げ、ブランドの長期的な顧客へと育て上げることに成功していることがわかる。

 

 

オムニチャネルの施策のポイント

 

オムニチャネルがECサイトや実店舗の利益を上げることに効果的だということはわかっていただけただろう。では、実際にオムニチャネル化するにあたってどのような施策をすればよいのか、ここで触れていこうとおもう。

 

施策を行う上での大前提

まず、前提として実店舗とECの顧客データ統合が行われている必要がある。顧客データ統合は、オムニチャネルの基本ともいうべき施策であり、どのようなチャネルでも同一の顧客の情報を積み上げていくためには必須となる。その結果、どの層を優遇すべきか理解し、セール時だけでなく通常から購入していただける層を優遇したいといった、どの層にどのような施策が効果的なのか分析することができる。また、一方で顧客データの統合は顧客目線では何のメリットもないケースが多い。そのためポイント統合を行った上で顧客データ統合を推し進めるケースが多い。ポイント統合は、顧客に実店舗でもECサイトでも共通のポイントが溜まるというメリット感の醸成に繋がる。そして、実店舗でもECサイトでもお得感が変わらないというイメージを持ってもらう必要がある。ECサイトで購入した場合ポイントが貯まるのに実店舗では貯まらないといった不平等感が生まれてしまっては実店舗とECサイト、どちらも利益を向上させることには繋がらないだろう。

 

実店舗在庫をECサイトで表示する

それでは、オムニチャネルに効果的な施策を紹介していく。1つ目は、実店舗在庫表示機能である。これは、実店舗の在庫をECサイトに表示する機能であり、これにより実物を見て購入を決める顧客を誘導することができる。

先ほど紹介したW closetでも商品毎だけでなく、サイズ・カラーなどを選んだ上で当該商品の在庫が全国の店舗リストに表示される機能が実装されている。

オムニチャネルは、実店舗とECサイトのお互いのデメリットを補い、メリットを促進させる効果がある。実店舗は商品の試着や販売店への相談といったメリットがあり、ECサイトには時間や場所を選ばず購入できるというメリットがある。実店舗表示機能といった施策は、実店舗とECサイトのメリット、デメリットを上手く利用した施策であり、このように相乗効果をもたらす施策がオムニチャネルにとっては重要である。

 

LINEのOfficial Web App活用

2つ目は、LINEのOfficial Web Appの活用である。Official Web AppはLINEが提供する、EC事業者とLINEのIDを連携させるサービス。昨年10月から正式に提供が開始されたばかりの機能だ。

EC事業者と顧客との接点として、メールマガジンはどの店舗にとっても馴染みのあるものだろう。しかしOfficial Web Appを使うと、顧客が普段慣れ親しんでいるLINE上で、顧客毎にメッセージの送信などを行えるようになる。日本最大級の古着通販サイトを運営する古着屋JAMインタビューによると、LINEの友達登録者のみに先行セールのお知らせを送ったり、ファッションのトレンド情報を送ったりと、距離の近い関係を築くことができ、実店舗からEC会員への誘導に役立っているという。LINEの友達登録を行うとメニューにID連携という機能があり、そこをタップするとECサイトの会員登録ができるという非常にスムーズな流れのため、より多くの人が会員登録してくれるようだ。メールマガジンで十分だと考える人も多いとおもうが、現在の私生活での連絡手段は着実にメールからLINEへと推移しているため、より身近さを求めるならばLINEの方が効果的だといえる。その結果、JAMではお客様の4人に1人はLINEのID連携を行っているという驚きのデータが出ている。

このような施策の他にも、ECサイトと実店舗の両方で利用可能なクーポンの配布といった施策などもある。オムニチャネル化することによってシームレスに購入できる環境になったことを活かした施策が効果的なようだ。

 

 

オムニチャネル化を失敗しないために

 

このようにオムニチャネル化は今のオンラインマーケティングにおいて非常に重要になり、着手しないわけにはいかない。しかしながらそう簡単に導入が完了しないことも事実だ。さらに導入が完了しても実際に運用時に問題が発生してしまうこともあるだろう。そこで、ここでは、オムニチャネル化を確実に行い、運用時にも失敗しないためにどようなことを気を付けていくべきか考えてみたい。

 

評価体制

システム色の強い施策のため、一見何も関係がなさそうにも思える評価体制であるが、実は非常に重要な鍵を握っている。ある程度の組織になると、ECと実店舗で部門が分かれているケースが多くなる。そのような場合に、EC部門と実店舗部門の売上だけを競わせるような評価体制の企業にはオムニチャネル化は全く向かない。逆に会社全体の顧客接点の場としてECと実店舗を捉え、お互いに補完し合う評価制度を持っている企業には向いている。顧客とのコミュニケーションを企業全体としてより多くとることができることがオムニチャネルの利点のため、顧客とのコミュニケーションを重要視しているような企業は成功することが多いようだ。

 

データ活用の土壌

評価体制にも通じるところがあるが、企業内でEC部門と実店舗部門が分断されておらず、シームレスにデータ活用ができる体制が整っていることも重要である。顧客情報などの施策を行う上で重要な情報が分断されてしまうとオムニチャネルの意味がなくなってしまうため、部門同士でデータを活用し合える土壌がある企業が向いているといえる。

 

愛着を持ちやすいブランド作り

どのような商材でもオムニチャネル化することで成果が出る、というわけでもなさそうだ。オムニチャネル化して成果を出しやすい商材というのも存在している。例えば、アパレルやコスメといった商材は、コミュニケーションを継続的に取ることで消費者もそのブランドに愛着を持ちファンとなることに心地よさを感じる。すなわち、そのブランドと長期的な関係を持つことで消費者自身が誇らしくなり、居心地の良さを感じるブランド・商材である必要がありそうだ。そのような愛着をブランドに対してしっかり持ってもらうことができれば、オムニチャネル化によって大幅な利益向上が可能になるだろう。

 

 

ECサイトのオムニチャネル化は実店舗運営との一体感向上が鍵

 

このように見てみると、ECサイトにおいてオムニチャネル化を成功させるための鍵はECサイト内には存在しないのかもしれない。企業のカルチャーや情報インフラ全ての面でECサイトと実店舗運営の一体感を高めていくことがもっとも重要なポイントいえるのではないだろうか。多くのECサイトが市場に溢れている中で、ECサイト単独での成功事例というのは少なくなってきている。そのためオムニチャネルのメリット・デメリットを理解し、オムニチャネルで得られる効果を理解することは利益向上の助けとなるだろう。EC業界が大幅な成長を遂げる中、ECサイト運営のみ、や実店舗運営のみ、では他の企業と差をつけにくいことは明白である。オムニチャネルを正しく理解し、効率的に用いることで、他の企業と差をつけることができるのではないだろうか。