ネットショップ・ECサイトの頑張りを表彰するEC業界の表彰制度
今やECサイト・ネットショップは国内だけでも100万店舗近くあるといわれており、競争は熾烈になる一方だ。ショップを運営していてもなかなか日の目を見ることもなく、粛々と運営している店舗は非常に多い。そのような店舗の頑張りや成果を表彰して業界全体を盛り上げる取り組みとして、ショップを表彰する制度をモールや、カートASPサービスを提供している企業が主催している。今回はそのような各ショップを表彰する賞やイベントを見ていこう。
楽天ショップオブザイヤー
年に一度、約4万店を誇る楽天市場のショップの中から、総合賞、ジャンル賞、サービス賞、特別賞が選出される「楽天市場ショップ・オブ・ザ・イヤー」。
1998年からスタートした同賞は、年間の流通総額や売上の成長率、注文件数、お客様対応、ユーザー得票数によって、約100店舗の優れたショップが選出される。受賞のメリットは、ECサイト内で使用できる受賞エンブレムや受賞店舗限定の研修旅行、特別無料広告枠などが与えられる点だ。年間の頂点を決める総合賞には10のショップが選ばれ、例年大手企業が名を連ねている(2015年度は、住友商事グループの爽快ドラッグや上新電気のJoshin web、エディオン、ビックカメラなどが上位を占めている)。9年連続、10年連続受賞といった常連も多く、やはり売上や注文件数が鍵を握ると言えるだろう。一方、楽天市場の各サービスを使いこなしたショップに贈られる楽天市場ならではの「サービス賞」も設けられている。サービス賞は、正午までの注文で翌日届く「あす楽」を積極活用したショップに贈られる「あす楽賞」や、クーポンサービス「RaCoupon」を積極活用したショップに贈られる「RaCoupon賞」、ソーシャルメディア活用サービス「S4」を効果的に活用したショップに贈られる「ソーシャル賞」など。今年も1月末に行われる授賞式の場で、受賞店舗が発表される。
カラーミーショップ大賞
GMOペパボが運営するネットショップ運営サービス「カラーミーショップ」が、利用ショップを対象に行っている「カラーミーショップ大賞」。
2014年から表彰が行われている同賞は、ECの構築・運営において創意工夫を凝らした店舗が年に一度選ばれる。選出されるのは40店舗で、6万店舗の頂点となる大賞のほか、10店舗に贈られる優秀賞、特別賞、各分野で優秀な商品を扱うショップに贈られるジャンル賞、日本文化の発信に力を注ぐ店舗に贈られるにっぽん文化奨励賞が用意されている。審査基準は、デザイン、接客、プロモーション、スマホ対応、売上成長率、一般投票の6点で、一次審査を通過したノミネート店舗を対象に一般投票が行われ、その得票数を加味して最終的に受賞店舗が決定される。同賞がユニークなのは、自らエントリーする方式を取っているということ。2016年は850店舗がノミネートし、最終的に41店舗が選ばれた。主催するGMOペパボは、モールには出店しない良店にぜひカラーミーショップを使ってもらいたい、と表彰を行う狙いを話している。
ネットショップ大賞
ECサイト構築システム「ショップサーブ」を利用している約2万店舗の中から、受注件数、売上、成長率、リピート率、会員数に基づいて優秀店を選出する「ネットショップ大賞」。
2009年にスタートし、現在は年に4回、ファッション・アクセサリー部門やグルメ・ドリンク部門など、カテゴリー別にトップ31店舗が表彰される。さらにこれ以外に、トップ3、カテゴリー賞、新人賞、各都道府県のトップを決める全国銘店賞が年に1回表彰される。Eストアーでは各店舗に専任のECアドバイザーが付いており、受賞はショップとアドバイザーの協力体制があってこそ。2016年は、ウィッグショップのSwallowtailや卓球通販専門店のたくつう、スペシャルティコーヒーロースターの堀口珈琲、靴専門店のBATH ONLINE SHOPなどが受賞した。
日本ネット経済新聞賞
EC業界で特に優れた実績を上げている事業者を讃え、EC業界を盛り上げることを目的に作られたのが「日本ネット経済新聞賞」だ。
年に一度、日本ネット経済新聞の記者が独自の基準で受賞企業を選考している。第3回目となる2016年は、2015年10月〜2016年9月の間に日本ネット経済新聞で取り上げられたEC事業者を対象に、11部門19社が選出された。売上や知名度に関わらず、有望なEC事業者が表彰される同賞。表彰式は日本流通産業新聞社が開催する「ダイレクト・マーケティング・フェア2016」で行われ、他店舗展開賞、急成長賞、スマホ賞、少数精鋭賞、海外EC賞、オムニチャネル賞、地域貢献賞など、オリジナリティ溢れる賞が発表されている。
全国ネットショップグランプリ
一般社団法人イーコマース事業協会が2009年から行っている「全国ネットショップグランプリ(旧エビス大賞)」。より良い日本のeコマースを追求するEC事業者の育成・顕彰を目的として、毎年優れたネットショップを選出している。
審査基準は、アイデアのユニークさや目新しさ、一般の顧客ユーザーへの情報提供の適切さ、サイトのデザイン性の高さ、操作性や動作確認の4項目。自薦・他薦を問わず、応募時点で6ヶ月以上ネットショップを運営していれば応募が可能だ。審査委員にはECに精通した面々が揃い、1次審査、2次審査、最終審査を経て、大賞、準大賞、特別賞が決定する。第9回目となる2017年は、4月8日に行われるイーコマース事業協会15周年イベント内で受賞者が発表される予定だ。
こんなのあるんだ!大賞2016
全国の地方新聞社が厳選した逸品をお取り寄せできるECサイト「47CLUB」が主催する「こんなのあるんだ!大賞」。
47CLUB内で販売されている約37,000点の商品の中から日本一を決める同大賞は、2014年からスタートした。商品部門とショップ部門が設けられており、商品部門では47CLUBで取り扱う商品の中から各地方新聞社が2つ推薦し、その後投票によって大賞が選出される。推薦基準は、サイトを訪れた人が「こんなのあるんだ!」と驚くような商品であるかということ。毎年ユニークな商品が選出され、2016年は奈良吉野いしいの柿バターが最優秀賞に輝いた。47CLUBのサイト内では各都道府県のエントリー商品も紹介されているため、一般ユーザーにとっても発表が待ち遠しい賞と言えるだろう。
JINDO BEST PAGES 2016
ホームページ作成サービス、Jimdoで作られたサイトの中から、年間のベストサイトを決定する「Jimdo Best Pages」。
Jimdoで作られているサイトであれば、プランや継続年数、作成者は問わず応募できる。審査基準は、Jimdoの基本機能を使いこなしたJimdoらしいサイトであるか、またユーザーにとって使いやすいサイトであるかなど。大賞であるJimdo Best Pageのほか、Jimdo Best Design、Jimdo Best Content、Jimdo Best Online Store、Jimdo Founder Selectionの4つの部門賞が用意されている。オンラインショップ部門では、2016年はコンバージョンに繋がりやすいサイト設計だと評価されたラベンダーサシェ、2015年はユーザーにとって有意義なコンテンツを多く提供している快眠ショップ夢幸望ハヤカワが受賞した。
表彰制度の意義
ネットショップを実際に利用する消費者の評価が判定基準に含まれているものは楽天のショップ・オブ・ザ・イヤーだけというのは少し残念な気もする。しかし、それぞれの賞は、数千から数万の店舗の中からの選定ということで、選ばれたショップは非常に嬉しいはずだ。実際にそれぞれの表彰式では毎年これを目標に頑張ってきた事業者の皆さんの嬉し涙あり、悔し涙ありと非常に見ている方もそのストーリーに惹き込まれる。間違いなくいえることは、このような表彰制度を行う主催各社は店舗のことを想いやる気持ちが非常に高いということだ。また、このような表彰によって本当に多くの店舗の担当者が日々の業務を推進するためのモチベーションとなっているだろう。100万店舗近いオンラインショップがひしめき合う中、市場を継続的に盛り上げて、切磋琢磨していくためには、このような取り組みは業界全体で盛り上げていくべき重要な取り組みとなっていくだろう。今後も各社の表彰制度が盛り上がりを見せて継続していくことを期待している。