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ECで買ったモノの受け取り方の多様化 - 受け取り専用ポスト、駅、ターミナル

ECで買ったモノの受け取り方の多様化 - 受け取り専用ポスト、駅、ターミナル

物流・決済・業務
2014/11/21

ECで買ったモノの受け取り方の多様化

 

ECでの配送といえば、配送業者が自宅に対面で届けてくれる形が定番だった。しかし近年、日時指定や当日・翌日配達に加え、一部のECサイトではコンビニでの受け取りも可能となり、商品の受け取り方に変化が見られより便利になりつつある。今回は商品受け取りの新たなサービスについて注目してみた。

 

 

受け取り専用ポスト

 

ポストというとどこの家庭にも標準的に備わっているものだが、EC業界では昨今このポストを改革しようという取り組みがいくつか登場して話題を集めている。

つい先日、Amazon日本郵政と提携して住宅用ポストを販売するというニュースが大々的に報じられた。Amazonは小型の商品をメール便で配送しているが、これまでそのうちの6割以上が大きすぎてポストに入らず、再配達の手続きを取らざるを得ない消費者も多かった。そこでAmazonはその状況を打破すべく、住宅設備メーカーNASTAと共同で投入口を大きくした住宅用ポストを開発したのだ。開発されたポストは戸建て用「Qual」と集合住宅用「D-ALL」の2タイプ。戸建て用は4万円前後で販売され、集合住宅用はデベロッパーを通じて設置を進めていく。巷では「高い」「配達員にポストだと認識させずらい」「ポストを買わせるより過剰な梱包をやめるべき」といった不満の声も上がっているこのポスト。今後どこまで普及するのだろうか。

 

 

 

一方、EC/小売業向け開発・ソリューション提供を行う株式会社エスキュービズム・テクノロジーは、スマートフォンアプリを鍵にし、受取人がいなくても荷物を保管できる宅配ボックス「スマート宅配BOX®」を開発。11月から株式会社サイバーエージェント・ベンチャーズと実証実験を開始した。配達員がBOXに荷物を入れ、専用アプリで鍵をかけるとユーザーに配達完了が通知される。鍵を開閉する際は、記載されたパスワードを専用アプリに入力してBOXにかざすだけ。クラウドで開閉履歴が管理されるため、配送トラブルの心配もない。また、ベースとなるBOXのサイズはあるものの、オーダーメイドでもサイズ指定ができるため、設置場所に応じて自由に使うことが可能となっている。今後は保冷機能の追加も予定しているという。

 

 

 

 

ライフスタイルによって濃淡はあるが多くの消費者がほぼ毎日のように使う駅。この駅にもECの波は押し寄せてきている。

佐川急便は、駅などに設置した宅配ボックスを使って荷物を受け取れるサービスを今年4月より福岡エリア限定で始めている。2015年3月末までの試験サービスとし、博多駅構内をはじめ、周辺の駅やダイエーなど23カ所にボックスを設置。自宅で不在票を受け取った人が専用サイトで受け取り場所を選択すれば、指定したボックスの中に荷物が置かれる。同社は2012年に環境省から「低炭素地域づくり集中支援モデル事業」を受託され、「博多駅前地区低炭素型集配送システム構築モデルプロジェクト」を立ち上げた。このサービスは同プロジェクトの一環となっている。

 

 

 

楽天は、楽天市場の一部店舗で購入した商品を専用ロッカーで受け取れる「楽天BOX」を、大阪市営地下鉄なんば駅、西鉄天神大牟田線の西鉄福岡(天神)駅と薬院駅に設置。今年5月から試験運用を開始している。ユーザーは、商品の購入時に使いたい場所の楽天BOXを選択するだけ。指定したBOXに商品が到着すると、購入者のもとに解錠用のパスワードがメールで送られてくる仕組みになっている。現在対応している楽天市場内の店舗は、Rakuten Brand Avenueのほか、イーザッカマニアストアーズと海外インポート専門ホンコンマダムなど25店舗のみとなっているが、今後は男性向けファッションや日用品などにも品目を増やす予定だという。

 

 

 

JR東日本は、インターネットで商品を注文してエキナカ店舗や自宅などで受取ることができる「ネットでエキナカ」を、11月17日から2016年3月末までの期間限定で開始した。実施店舗は、エキュート(大宮、品川、品川サウス、立川、日暮里、東京、上野)、グランスタ(東京)、セントラルストリート(東京)、ホテルメトロポリタン エドモント(飯田橋)の10店舗。商品数は現在約150点と少ないが、今後は店舗数・商品数ともに順次拡大していくとしており、通勤・通学途中の利用者を狙う。これからの季節、手土産を購入する人々で駅構内が溢れかえる帰省時にも重宝されそうなサービスだ。

 

 

 

 

海外で盛んなターミナル型

 

米国では、スーパー等に設置されたAmazon専用の「Amazon Locker」など、商品の受け取りにおいてはさまざまな取り組みが行われているが、英国でもロンドン駅を中心としたエリアに受け取り専用のロッカーサービスを開始したことをAmazonが発表している。ニーズは日本とまったく同じで、Amazonで注文した商品を配送してもらった際に自宅にいないことが多く、その受け取りが面倒であるということだ。このようなニーズは日本だけでなく海外でも徐々に増えてきていると言えるだろう。

 

 

 

つい先日、サンフランシスコを拠点にするCurbside社が、スマホで注文して店舗でピックアップするスマートフォンアプリ「Curbside(カーブサイド)」を発表した。近隣エリアの複数店舗の商品をアプリ経由で注文し、対応ストアや専用窓口で即日受け取ることができるサービスだ。商品の準備が完了するとスマホに通知が来る仕組みになっており、買い物時間を軽減したり、外出帰りに受け取りたいといったニーズに応える。また、Curbside専用の受取窓口では車に乗ったままでの受け渡しにも対応しており、ドライブスルー感覚で気軽にショッピングを楽しむことが可能となっている。対応店舗は、ターゲット、クレイト&バレル、ホーム·デポ、トイザらスなど10店舗。現在は数十万点の品揃えの中から商品を注文することができるが、今後はさらにエリアを広げて展開する計画だ。

 

 

 

 

受け取り方の多様化の流れは加速するのか

 

ECで購入した商品の受け取り方の多様化に携わる事業者は多種多様だ。Amazonや楽天のようなモールを運営する会社、佐川急便・日本郵政のような配送事業者、JR東日本のような場所を持っている会社、エスキュービズム・カーブサイドのようなEC関連ベンダなどだ。配送事業者や駅やコンビニなどの場所を持っている会社の取り組みは非常に分かりやすいが、Amazonのようなモール運営会社が一番積極的に取り組みを行っている点が非常に興味深い。

Amazonをはじめとするモール運営会社は即日配達などを実現するために、ロジスティクスの改善を行ってきた。しかし「ラスト1マイル」と言われる消費者の自宅までのリーチはコントロール出来ない領域であったため、そこにこのような形でアプローチしてきたと考えることが出来る。

しかし一方で消費者がECを使うメリットの1つに、重たいモノ・かさばるモノ・外で買うには恥ずかしいモノを自宅まで送ってもらいたいというものがある。対応エリアや受け取り方のバリエーションの拡張と共に、対応する商品の特徴も考慮しながら展開していく必要もありそうだ。

そのような視点を考慮すると、自宅のポストの改善という、マンションの宅配ボックスの延長線上のサービスが最終的には最もニーズが高そうだが、駅で受け取ることでより早く商品が手に入る可能性があったり、送料が安くなったり、目に見えるメリットが提供できれば他のバリエーションも浸透していく可能性もありそうだ。今後もどのような事業者がどのような手段を提供して利便性を高めていくことが出来るか注目していきたい。

 

 

<参考>

ECの即日配達サービスの限界への挑戦 - 頼んだものがすぐ届くのが当たり前の未来はやってくるのか