スマホでものが売れるのか
「スマートフォン」と「eコマース」をテーマにしたイプシロン株式会社主催のセミナーが、2月1日に開催されました。
本日はそのセミナーの中から、エンパワーショップ株式会社代表西澤が講演した、「スマホでものが売れるのか ~EC×スマホ 4つの鉄則」についてご紹介します。
2015年には、携帯電話所有者の70%がスマートフォンになると予測され、ここ2、3年でさまざまな業界から注目を集めている“スマホ”。
現在、スマートフォン保有者の40%がスマートフォンでECを利用していると言われており、スマートフォンはECにとっても切っても切れない関係にあります。
そこで今回は、その“スマホ”をどのように活用すればものが売れるのか、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
ECにおいて“スマホ”はこう使われている
ネットショップ(BtoC)の国内店舗数は6万強、市場規模は8.5兆円と言われていますが、そのうちモバイルコマースが占める市場規模は1.2兆円(出所:モバイルコンテンツフォーラム)、2011年の市場規模の14%に達し、特に物販系の伸び率が大きくなってきているのが現状です。
このデータは少し前のデータなので、最近のスマートフォンの急激な伸びが見られる前のデータと考えた方が良さそうですね。
では、購入に至る経路でどのようにスマートフォンが使われているのか、その利用シーンを考えてみましょう。
外出時でも思い立ったときにすぐ調べることができるスマートフォンは、PCやタブレットと同様に重要な情報源のひとつです。
最も気軽に使用することのできる情報源として、スマートフォンは検索の重要な入り口を担っているのです。けれど画面が小さいゆえ、商品の詳細情報が見づらい、価格やオプションの比較がしづらい、といったデメリットも指摘されているので、スマートフォンは単体で完結するものではなく、重要なタッチポイントがひとつ増えたと考えるのが、現時点では現実的と言えるでしょう。
そして、一番注目したいのは、実店舗でのスマートフォンの利用です。
実店舗で商品を見ながら、価格の確認や、商品の口コミ情報を店頭で確認した経験がある方も少なくないのではないでしょうか。
実店舗でモバイルを利用するユーザーの88%は、何らかの形でその行為が購入に繋がったという結果が出ています。すなわち、店舗でモバイルを利用しているユーザーは極めて購買意欲が高く、何らかの形で購買に繋がっていると言うことになりますね。
続いては、スマートフォンユーザーのうち、 実際にスマートフォンで買い物をしたことがある人は全体の33%。
これは多いと感じるか、少ないと感じるかは様々だと思いますが、約5,000万人と言われるスマートフォンユーザーの母数から考えると、実に1,500万人がスマホで買 い物をしていることになります。
当然日常生活においてモバイル活用の多い層が積極的に購入しているわけですが、利用者の年代は若く、中でも女性が多いとい うことが分かっています。
このように、スマートフォンで購入経験のあるユーザーが、購入検討においてモバイルが関与する割合は、79%にもおよびます。
さらに、検討段階から購 入段階に移行する割合は、商品ジャンルにおいてPCでの傾向と大差がないという結果も出ているのです。
(出所:Googleモバイルショッパーリサーチ)
今年中には、アクセス数で30~40%程度、売上高で考えると30%程度を占める可能性もあるスマートフォンの EC。
楽天やamazon、Yahooなどは、2年ほど前から、スマートフォンでアクセスした場合には、スマートフォン向けの画面が表示されるため、スマートフォンで購入する環境は十分整っていることを消費者も十分に理解しており、環境は十分整っています。
今後はたとえ小さなネットショップでも、“スマホ”に対応したページ作りは必須になってくる と言えるでしょう。
データから見るスマホの傾向
それでは、ここ数ヶ月の動きまでを含めた、とても新鮮なデータを、弊社EC向け解析ASPサービスShopnoteから紹介していきましょう。
ネットショップの売上高が高ければ高いほど、スマートフォンの取り組みはしっかりと行っているものですが、その結果にも違いがあるのか。答えはYesです。
明らかに月間売上高1000万円以上か以下かで、全数に対するスマートフォンの来訪者数・売上高の比率に差がありました。
また重要なのは、1000万円以下のショップでは、来訪者の割りに、売上に繋がっていないこともデータから確認することが出来ます。
次は、時系列での比較を見ていきましょう。肌感覚では、ここ最近のスマートフォンのユーザー数の増加や、活用の度合いが伸びていることは分かっていたのですが、データで見ると、その感覚を遥かに超える勢いで、スマートフォンユーザーの来訪者数と売上高の割合が伸びてきているのが分かります。
ただ、一方で、コンバージョンレートは対PCユーザー比で、6割程度で頭打ち。客単価はまだ伸びが見られ、平均PV数は8割程度をずっと維持しているなど、時系列で見ても各種データに違いが見られました。
これは、以下のことを示していると考えられます。
- スマートフォンを使ってeコマースサイトを閲覧はするが、購入はどちらかと言うと、PCで行う消費者が多い。
- スマートフォンで複数の商品を購入するハードルが徐々に下がってきている。
- 思ったよりもスマートフォンでPCと変わらないくらい多くのページを閲覧している消費者が多い。
こうやって最新のデータを見てみると、肌で感じていた色々なことが、再確認出来る部分もありますが、新しい発見もあるものですね。
大手の取り組み事例
ここで、大手各社が行っているスマホにおける取り組みをいくつか紹介しましょう。まず、店舗誘導が比較的しっかりしていると評価されているユニクロでは、会員限定割引や時間指定クーポン、タイムセール告知にスマホを活用しています。購買履歴を活用した個人の履歴も蓄積されているので、それに合わせたプロモーションなどを行っているのも特徴のひとつです。
全国各地でアウトレットを展開する三井アウトレットパークでは、モニプラを活用。スマホを使ってチェックインすることにより、割引クーポンがもらえる仕組みになっています。
また、ローソンは店舗に専用Wi-Fiを導入。来店した人のみが閲覧できる限定コンテンツやクーポンを配布しています。
ヤマダ電機はレジでバーコードをスキャンすることによってポイントが加算されるシステムを導入し、同時にユーザーの志向や購入履歴を蓄積しています。
一方、コーセーはリアル店舗との連携ではなく、カメラで撮影した自分の顔でメイクを疑似体験できるというサービスを導入。クリスピー・クリーム・ドーナツでは、丸い被写体をドーナツに自動変換するカメラ機能がついたアプリを提供しています。両社は一見収益に結びつかないように思える機能ですが、これによってブランドとお客様との距離を縮めるという効果を生み出しています。
このように、たとえ大手企業であってもスマートフォン単体で何かをしようという試みは見られず、何よりも実店舗との連携を優先していると言えるでしょう。
以上の大手の取り組みから読み取れることは3つあります。
- 企業側は、“情報提供”、“ファン化(ショップとお客様との間でしっかりとした信頼関係を築く)”、“便利な機能を提供”、の3つの軸でサイト整理やアプリ提供を行っている
- 実店舗がある場合は必ず店舗との連携を行って、スマホだけで完結しているケースは少ない
- スマホにおける情報提供や関連サービス展開は手を緩めずにやっていくことが重要
このように大手各社も、スマートフォンの活用方法を試行錯誤しているようにも見受けられます。ネットショップにおいても、色々試行錯誤しながら、ショップの特性や、状況に応じた突破口を見付けていく必要があるのではないでしょうか。
EC×スマホ〜4つの鉄則〜
最後に、ここで紹介させて頂いた内容や、それ以外の事例などから考えている、「ECとスマホの4つの鉄則」(以下)を覚えておいてください。
- 取り扱い商材に合わせた利用シーンを考慮せよ
自ショップの商品は、いつ、どのような時に、どこで検索されるのか、をしっかり検討して、短期的なコンバージョンを期待せず、実利的な情報を求めている消費者へしっかり対応していくことが重要です。 - 情報をしっかり提供せよ
小さな画面から情報を識別したい消費者の気持ちを考え、その商品が類似商品と混同せずしっかり理解出来る情報をしっかり提供することが必要です。また、良くも悪くも商品へのレビューもしっかり提供していきましょう。 - スマホ・PC・リアルを分断せずにスマホの優位性を示せ
PCでしか確認できない情報や、ただPCページのリンクを貼る、といったことにならないようにようにします。スマホ限定価格やキャンペーンを積極的に実施し、常に実店舗への導線を考慮しましょう。 - 購入以外のゴールを豊富に提供せよ
クーポン、店舗への電話、問い合わせなど、お気に入り登録、等をスマートフォンの機能を活かし簡単にできるようにすると同時に、将来的には実店舗の在庫確認や取り置きなども可能にするような進化が必要だと思います。
スマートフォンでものが売れるのか。直接的な答えにはなっていなかったかもしれませんが、「売れるのか」ではなく、「売っていかなければならない」、「どのように売っていくのかしっかり考えなければならない」と言う表現の方が正しいようです。
スマートフォンの利便性を上手に利用して、対応していくことが、今後のネットショップの浮沈の鍵を握っていると言っても過言ではない時代が到来していると思います。