Salesforceのデータは、ホリデーシーズン中にAIエージェントが成長、コンバージョン、効率性をどのように促進したか、そしてマーケターが次に何をすべきかを示している。
Salesforce(クラウド型CRMソフトウェアを提供する米国企業)のデータによると、2025年のホリデーショッピングシーズンはAIを活用したエージェント型ショッピングへの明確な移行により、世界全体の売上高が1兆2,900億ドルに達し、新記録を樹立した。堅調な消費者基盤が世界的なオンライン売上高を前年比7%増に押し上げ、米国での売上高は2,940億ドルと2024年から4%増加した。
自社のAIエージェントを導入したブランドは、そうでないブランドに比べて大幅に高い成長率を達成した。価格上昇が続く中でも消費者の購買力は堅調で、最良の買い物を見つけるためにモバイル端末とAIエージェントへの依存度が高まった。
このことから得られる3つの重要なポイントと、それが今年のホリデーショッピングシーズンはもちろんのこと、これからの数か月間、マーケティングリーダーにとってどのような意味を持つかについて見ていこう。
1.チャットからオペレーションまで、エージェント型コマースが到来
2025年のホリデーシーズンのデータから、AIエージェントが基本的なカスタマーサービスの問い合わせ対応にとどまらず、より効率的なオペレーションをサポートしながら収益を生み出す原動力となりつつあることが確認された。
AIエージェントは世界の小売売上高の20%に影響を与えており、ChatGPTやPerplexityなどのAI検索からのトラフィックは極めて高い購買意欲を示し、ソーシャルメディア経由のトラフィックと比較して9倍のコンバージョン率を達成した。さらに、Pandora(デンマークのジュエリー・アクセサリーの製造・販売企業)やSharkNinja(米国の掃除機・キッチン家電大手)のように自社エージェントを導入した企業は、そうでない企業よりも59%高い成長率を記録した。
Salesforceの消費者インサイト担当ディレクター、Caila Schwartz氏は次のように述べる。 「エージェントは、単に購買意欲が高い顧客の発見を通じて、2,620億ドルの売上を牽引しただけではない。それはこのシーズンのオペレーションにおけるヒーローとなったのだ」。
AIエージェントはもはや受動的な情報ツールではなく、コマースライフサイクルにおける能動的な役割を果たしている。ホリデーシーズンの繁忙期には、12月にエージェント型AI搭載サービスの対話数が66%増加した。
「AIはもはや単なるカスタマーサービスツールではない。ショッピングカートを支える最も効率的な新エンジンであり、ホリデーシーズンの成長を決定づける要因である」とSchwartz氏。
重要なのは、これらのエージェントが複雑なタスクを自律的に処理した点だ。返品手続きの開始や配送情報の更新といったアクションが142%も急増する中、AIエージェントは需要のピーク時の業務拡大においてその真価を発揮した。
2.モバイルが発見と購入を支配
2025年の記録的なホリデーショッピングシーズンは、AIだけが要因ではなかった。2025年はモバイル端末がショッピングの定番としての地位を確固たるものにした。重要なサイバーウィーク(アメリカのサンクスギビング(11月第4木曜日)の次の月曜日である「サイバーマンデー」から1週間程度続く、大規模セール)期間中、世界のオンライントラフィックの78%、そして注文の70%がモバイル端末から発生し、この優位性はブラックフライデー(サンクスギビングの翌日である金曜日に行われる大規模セール)にも及び、世界全体の注文の約70%がモバイル経由で行われた。
この傾向は数年前から見られたが、今やショッピングジャーニーは圧倒的にモバイル端末中心となっている。2025年の注文の74%がモバイル経由と、2024年の62%から大きく増加していることから、この状況はしばらく続くと見られる。世界全体のオンライントラフィックが13%増加する中、消費者は購入前に時間をかけて商品を閲覧しており、その調査の大部分はスマートフォンで行われている。トラフィックの71%はモバイル端末からのものだった。
また、支払い行動もモバイル中心へと変化している。「後払い決済(BNPL)」の利用は一部地域で横ばいまたは減少した一方、Apple Payなどのモバイルウォレットの利用は増加。これはスピーディでスムーズな決済体験が好まれていることを示している。
3.高コスト・高返品経済でも勝者は生まれる
2025年のホリデーシーズン、消費者の支出は増えたものの、購入により慎重になり、高価格商品を購入する前には入念な調査を行ったことから、eコマースサイトでの閲覧時間が大幅に増加した(米国では35%増)。
Salesforceのデータによると、世界全体および米国における平均販売価格は7%上昇し、これが売上高の伸びの大部分を占めた。一方、注文数の増加は世界全体で3%、米国では1%にとどまった。この価格上昇は「米国の消費者が依然としてインフレの影響を強く感じている」ことを意味する、とSchwartz氏は指摘する。
リーダーが注目すべきもう一つの重要なトレンドは、返品率の上昇である。返品された商品の総額は1,810億ドルに上り、これは全購入額の14%に相当する。消費者はコスト上昇や支出により慎重になり、商品調査に費やす時間も増え、返品は2024年比で10%増加した。
この高コスト・高返品の経済状況において、消費者は高い価格を支払う意思がある一方で、その判断を簡単に撤回する傾向も強く、返品処理(リバースロジスティクス)への負担の増大を招いている。
マーケティングリーダーにとって意味すること
ここからは、リーダーが今後数か月間で何をすべきか、2026年のホリデーシーズンをどのように計画すべきかについて、特に重視すべき3つのステップを示したい。
自社のエージェント型AIの導入
AI検索で表示されるための生成エンジン最適化にも並行して注力する必要はあるものの、ブランドはサードパーティのAI検索エンジンだけに依存すべきではない。その代わりに、ブランドは独自のAIエージェントをデジタルストアフロントに統合し、購買意欲の高いトラフィックを獲得し、目の肥えた消費者の購買意欲を高める必要がある。実際、自社ブランドのエージェントを導入した小売業者は、そうでない小売業者よりも売上の成長率が32%速かった。
購入後のプロセスの自動化
返品が増加し、サービス需要が急増している中、ブランドは住所変更や返品手続きの開始といった、難易度は低いが、処理量が多い業務の増加に対応するためにAIエージェントを導入すべきである。これにより利益率を守りつつ、長期的な顧客ロイヤリィに影響するような、より複雑な問題への対応に人的リソースを集中できるようになる。
モバイルでの商品発見とBOPISの最適化
モバイルでの購買体験をシームレスなものにすることが重要である。特に、ホリデーシーズン直前には、「オンラインで購入、店舗で受取り(BOPIS)」に切り替える駆け込み購入者が増える。2025年のホリデーシーズンでは、BOPISの利用が12月22日(月)にピークを迎え、オンライン注文全体の35%が店舗受取りとして行われた。
実験段階のAIから運用上の優位性へ
2025年のホリデーシーズンは、実験段階のAIの時代が終わり、運用段階のAIが到来したことを告げるものであった。重要なのは売上規模だけではなく、その売上がどのように生み出されたかである。注文数はわずかな増加にとどまり、実質的な成長は平均販売価格の上昇とテクノロジーの戦略的な活用によって牽引された。2025年の小売業界では、AIエージェントとモバイルコマースが主流となり、商品発見から購入、そして購入後のサービスに至るまで影響を与えた。
Schwartz氏は、「2025年のホリデーショッピングシーズンは、AIエージェントが小売エコシステムの中核となり、商品発見のための新たな収益源であると同時に、顧客サービスにおける不可欠なリソースとして機能していることを示した」とシーズンを総括した。
同社のデータによると、自社ブランドのAIエージェントをエコシステムに組み込んだ小売業者は、そうでない企業を大幅に上回る成果を上げている。これはエージェント機能がもはや目新しさではなく、競争上の必須要件となったことを示している。