ブランドへのロイヤリティが低下する中、買い物客は自分の購入品に確信を持つために、詳細な商品コンテンツやユーザーレビューにより頼るようになっており、信頼の拠り所をロゴから現実世界の証拠へとシフトしている。
商品体験管理ソリューションを提供するSyndigoが発表した「2025 Omnichannel Shopping Benchmarks(2025年オムニチャネルショッピングベンチマークレポート)」によると、消費者の5人に4人以上が、購入の判断を下す際に、ブランド認知度よりも詳細な商品説明や複数の画像と動画、顧客レビューといった高付加価値コンテンツを重視すると回答している。
米国とカナダの消費者1,800人を対象とした調査に基づく本レポートでは、85%の買い物客が商品購入の決定においてブランドよりもコンテンツを重視していることが明らかになった。
「最も基本的なレベルでは、商品コンテンツへのアクセスは確信へのアクセスである」と、SyndigoのCMO(最高マーケティング責任者)であるLeah Allen氏は述べる。
同氏は、消費者が防水ハイキングブーツのような特定の商品を探す際、購入する商品が満たすべき一連の条件を念頭に置いていると説明する。防水素材、高いグリップ力のあるソール、足首のサポートなどを求めているかもしれない。
「これらは消費者が検索し、小売業者やブランド間の検索結果を比較する際に確認できる商品の詳細である。そして、調査を通じて収集できる情報量に基づいて個々の商品への信頼を築いていく」と同氏は語る。
「消費者は、購入品にどのロゴが付いているかよりも、自分のニーズを満たすという確信を重視していると私たちに伝えているのだ」と同氏。
「ここで重要な役割を果たすのが、リッチメディアや評価・レビューといったユーザー生成コンテンツだ」と続ける。「買い物客は、サイズや色、素材といった商品の基本情報だけでなく、実際に他の顧客が同じ目的で同じ商品を購入し、問題なく使用できたかどうかを知りたがっているのだ」。
さらに同氏は、商品レビューやユーザーQ&A、ソーシャルメディアコンテンツが、ブランドの商品情報に第三者による検証を加えることで、見込み客にとっても社会的証明となり、信頼をさらに高め、買い物客に購入決定を下す確信を与えると付け加えている。
実物に触れることの代替手段
ラスベガスに拠点を置くリサーチ・分析・アドバイザリー企業、SmartTech Researchの社長兼主席アナリストであるMark N. Vena氏は、オンライン買い物客にとってコンテンツが極めて重要になっていると主張する。「消費者はブランド認知度よりも商品コンテンツを重視している。オンラインショッピングでは商品を実際に触ったり試したりすることができないため、商品の詳細、仕様、画像、レビューが現実世界での確認の代わりとなるからだ」と同氏は語る。
「ブランドと商品が適切にマーケティングされれば、そのブランドは品質の代名詞となり、人々は自分が知っていて信頼できるブランドに惹かれる」と、オレゴン州ベンドのコンサルティング会社Enderle Groupの社長兼主席アナリスト、Rob Enderle氏は付け加える。
「人々がブランドを無視し始めるということは、マーケティングがもはや機能しておらず、関連ブランドが価値を失っていることを意味する」と同氏は語る。
サンフランシスコにある市場調査会社Near Mediaの共同創業者Greg Sterling氏は、この調査結果はやや誤解を招く可能性があると主張。「消費者は品質と価値を求めている」。「それは、知っているブランドが提供する場合もあれば、聞いたこともない企業が提供する場合もあるのだ」。
「ブランドは多くの人にとって品質の代名詞と見なされている」と同氏は続ける。「しかし、この経済状況では、消費者は価格に非常に敏感だ。そして、それに応じてブランドロイヤリティも低下している」。
「しかし、購入の決定は、商品そのもの、ブランドとの過去の経験、商品レビューなど、多くの要素に左右される」と同氏は述べる。「ブランドとコンテンツのどちらか一方を単純に切り捨てるわけではない。消費者は最良の商品を最良の価格で手に入れたいと考えている。コンテンツは、それを理解するのに役立つ」。
AI活用の拡大
Syndigoは、買い物客の間でAIツールの利用が増加していることも明らかにした。調査対象となった消費者のほぼ半数(45%)が、商品を調査する際にAIツールを使用していると回答しており、これは2024年の調査結果から14ポイント増加している。
「今日の消費者は、ブランドの名声よりも価値を重視している」と、ニューヨーク市に拠点を置き、キャッシュレス決済と顧客ロイヤリティを融合させた金融テクノロジー企業、Loya Payの共同創業者であるGina Gindorf氏は主張する。
「価格が上昇し、オンライン上に無限の選択肢がある中で、買い物客は購入を価値あるものに感じさせる充実した商品コンテンツや具体的な特典を優先している」と同氏は語る。「消費者は有名なロゴよりも、詳細な情報、実際の顧客体験、透明性のあるインセンティブといった目に見えるものを信頼している」。
「AIを活用した商品リサーチの台頭が、この変化を加速させている」と同氏。「小売業者が明確で体系化されたコンテンツと真の価値を提供しなければ、AIツールはより最適化された競合他社の商品を表示するだけだ。リッチメディアやユーザー生成コンテンツ(UGC)は顧客に確信を与えるのに役立つが、AI時代においてはどちらも誤解を招く可能性がある。そのため、買い物客は洗練された商品ではなく、パターンや証拠を求める傾向が強まっている」。
ニューヨーク市のマーケティングエージェンシー、PartnerCentricのCEO兼創設者であるStephanie Harris氏は、AIが驚くべき近道となり得る一方で、ニュアンスを平板化させてしまう可能性もあると指摘する。
「AIは古いデータを混在させたり、文脈から外れた意見を要約したり、意図せずにある一つの情報源を過度に重視したりする可能性がある」と同氏は語る。「AIはレビュー、記事、クリエイターのコンテンツなど、検索エコシステム内のあらゆる情報を引き出すため、そのエコシステムにおける不整合は急速に拡大する恐れがある。買い物客はAIを最終的な判断ではなく、出発点と捉えるべきである」。
Harris氏は、AIがショッピング体験における最初のタッチポイントになるケースが増えているため、小売業者はAIが読み取る情報が正確で構造化され、広く配信されていることを確認する必要があると助言する。「これには商品フィード、比較データ、FAQ、ユーザー生成コンテンツ(UGC)、そしてパートナーが制作したコンテンツが含まれる」と同氏。「この基盤が十分に強固でないと、AIは空白を独自に解釈してしまい、結果として、買い物客が自社サイトに到達する前に競合他社へ流れてしまう可能性がある」。
しかし、AIは消費者と小売業者の双方にとって落とし穴を生み出す可能性がある。「AIは文字通り、あらゆるものを美しく見せることができる」と、グローバル顧客データプラットフォームおよびエンゲージメント戦略を提供するRedpoint Globalのシニアプロダクトマーケティングマネージャー、Steve Zisk氏は指摘する。
「メディアが完璧すぎる印象を与えると、買い物客は現実的な期待値を大きく上回る、理想化された商品像を信じてしまうリスクがある」と同氏。「イメージと現実の間に明らかなギャップが生じた場合、小売業者は消費者の返品による返金請求の急増を目の当たりにすることになる」。
商品調査やAIツールに加え、ソーシャルコンテンツも買い物客の最終的な決定に影響を与える。
ソーシャルコンテンツの重要性
Syndigoは、ピア・ツー・ピア型のコンテンツが購買決定において決定的な役割を果たす可能性があることも見出した。ユーザー生成コンテンツは信頼を構築すると同社は述べている。「顧客レビューが少なすぎる」ことが、買い物客が購入せずに商品ページを離れる主な理由の一つとして挙げられた。また、買い物客の77%が、顧客評価、レビュー、ユーザー投稿コンテンツによって、「必要ないと思っていた商品を購入する決断をした」と回答している。
アトランタの経営コンサルティング会社、Ardinal Strategy Groupの創設者兼マネージングコンサルタントであるAndre Inverdale氏は、ユーザー生成コンテンツ(UGC)がソーシャルメディア全体における商品コンテンツ戦略の最も強力な推進要因の一つであると主張する。
「それは、日常的なユーザーの視点を重視するターゲット消費者とのブランドのつながりを加速し、深める」と同氏。「多くの場合、それはブランド自身のコンテンツよりも、買い物客の目により大きな価値をもたらす」。
「消費者はブランドのロゴではなく、他の消費者からの情報を信頼する」と、サンフランシスコの顧客サポート自動化ツールメーカー14.aiのCTO兼共同創業者Michael Fester氏は付け加える。
「商品コンテンツが消費者の疑問に答えつつ、商品のメリットを示す形で作成されていれば、ブランドと消費者の間ではなく、消費者間でより強い信頼関係が確立される」と同氏は語る。「TikTokショップや新しいブランドが毎日バイラルになる時代において、消費者は老舗ブランドよりも、商品の品質や透明性をより重視している」。
ブランド認知度への依存度が低下する中、同氏は小売業者に対し、商品ページをミニセールスマンのように扱い、消費者の懸念に事前に対処できる明確な商品情報を掲載するよう助言する。「カスタマーサポートも、コンバージョンの主要な促進要因になりつつある」と同氏。「チャットボットやAIアシスタントは、消費者を購入へと導くために、即時かつ正確な商品固有の回答を提供すべきだ」。
しかし、グルーミング・頭皮ケア製品のオンライン小売業者Domepeaceの創業者兼CEOであるAbel Disla氏は、ユーザー生成コンテンツには独自の落とし穴があると指摘する。「消費者は、クリエイターが報酬を受け取っているのか、あるいは商品の提供を受けているのかを知り、それに応じて主張を評価すべきだ」と同氏。「ブランド側はそうした関係を明確に表示し、ネガティブな体験を隠蔽せず、全てのレビューを美化しようとする衝動を抑えるべきである」。
「私が目にする最悪の過ちは、顧客コンテンツを単なる宣伝として扱うことだ」と同氏は述べる。「優れた小売業者は、顧客コンテンツを生きたフォーカスグループのように読み解き、そこから得られたインサイトを商品の改良に反映させ、分かりにくい説明文を書き直し、期待値を調整し、そのサイクルを顧客ロイヤリティの真の原動力へと変えていく」。
カリフォルニア州ラクレセンタに拠点を置く貨物輸送およびeコマーステクノロジー企業、Freight RightのCEOであるRobert Khachatryan氏は、ブランドがユーザー生成コンテンツで陥りがちな最大の過ちは「使いすぎること」であると付け加える。
ユーザー生成コンテンツは、コロナ禍前は斬新で興味深いものだったが、ほぼ6年が経過した今では当たり前のものとなり、多くのトレンドと同様に飽きられてしまった、と同氏は語る。
消費者は今や、有名ブランドから新興ブランドまで、あらゆるブランドがユーザー生成コンテンツを活用しているのを目にしており、それに慣れてしまっている、と同氏は主張する。その斬新さや目新しさは失われ、消費者はコンテンツ重視の広告を、従来のマスメディア広告と同じように、単調で味気ないものとして捉え始めているのだ。
※当記事は米国メディア「E-commerce Times」の11/25公開の記事を翻訳・補足したものです。