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AIがゼロクリック検索時代における可視性を再定義

AIがゼロクリック検索時代における可視性を再定義

マーケティング
2025/11/13

ゼロクリックの世界では、可視性は答えが届けられる地点から始まる。検索は今や、検索結果全体で信頼性、信用、権威性を獲得したブランドを評価する。


検索は、もはやクリックだけで決まるものではない。Web全体で、Webサイトを訪問することなく検索が終わる割合が増加している。

  • Similarweb(マーケティングインテリジェンスツールを提供するイスラエル企業)の分析によると、検索エンジンがより直接的な回答やAI要約を表示するにつれ、ゼロクリック行動が増加し続けている。
  • Semrush(米国に拠点を置くデジタルマーケティング向けのSaaS企業)も同様の傾向を報告しており、アウトバウンドクリック数の減少はAIによる概要(AI Overviews)や強調スニペット(検索結果の最上部に表示される、質問への直接的な回答)などの即時回答機能の拡大と関連していると述べている。
  • GoogleのAIによる概要は、2025年3月に米国のデスクトップ検索の13.14%に表示され、1月の6.49%から増加した。PerplexityChatGPT Searchなどのプラットフォームは、検索のあり方を要約された会話形式の回答へとさらにシフトさせており、多くの場合、クリックする必要さえなくなる。

可視性は依然として重要だが、その意味は変化した。ブランドは今やトラフィック量ではなく、AIが生成した回答や信頼できる引用への出現頻度で評価されるようになった。順位よりも存在感が重視されるようになったのだ。


ランキングとリーチはもはやイコールではない

従来のSEOでは、ランキングとトラフィックで成功を測っていた。しかし、今日のSEO環境では、これらの数字は全体像の一部しか示さない。検索上位に表示されても、ユーザーがサイトに到達する前に必要な情報が得られない場合、エンゲージメントは保証されない。

マーケターは、回答自体の中に自社の専門知識がどの程度頻繁に現れるかを測定する必要がある。AIによる概要、強調スニペット、音声応答への掲載は、リーチ、認知度、そして信頼度を表す。目標は、意思決定段階での可視性だ。

クリック率、直帰率、セッション時間といった従来のKPI(重要業績評価指標)では、こうした影響を捉えることができない。新たなベンチマークは信頼性、つまりクリック頻度ではなく、自社のインサイトがユーザーの閲覧内容にどれだけ一貫性をもって影響を与えているかである。


今こそ重要な指標

これらの指標は、ゼロクリックの世界において、信頼性と存在感がパフォーマンスを左右することを示している。

  • 回答包含率:AIが生成した回答や要約の中に、ブランドのコンテンツがどの程度頻繁に表示されるかを追跡する。これは、AIの権威性の深さと、アルゴリズムが回答を作成する際に、コンテンツをどの程度頻繁に参照しているかを示す。
  • エンティティプレゼンス指数:AIおよび検索環境全体で、ブランド、製品、またはリーダーシップがどれだけ一貫して認識されているかを測定する。これは、アルゴリズムとオーディエンスの両方が、特定の専門分野と貴社をどれだけ明確に関連付けているかを反映している。
  • ソースオーソリティスコア:正確性、構造、鮮度を総合的に評価し、コンテンツの信頼性と品質を評価する。スコアが高いほど、検索エンジンが回答をまとめる際に、コンテンツが信頼できる情報源とみなされることを意味する。
  • AI引用頻度GoogleBingPerplexityなどのプラットフォームにおけるAIによる回答内で、コンテンツが引用またはリンクされた回数をカウントする。頻繁な引用は、貴社のインサイトがデジタルチャネル全体での情報提示方法に積極的に影響を与えていることを示している。

これらの指標を組み合わせることで、クリックが発生する前にマーケティングが認知度にどのような影響を与えているかを把握できる。これは、ランディングページだけでなく、検索体験の中で得られる注目と信頼の価値を反映している。


新たな測定フレームワークの構築

アナリティクスシステムは、ページ訪問数だけでなく、可視性とコンテキストも考慮するよう進化させる必要がある。マーケティングチームは、Google Search Console(Google検索におけるWebサイトのパフォーマンスを分析・改善するためのツール)のデータを、回答の表示を検出し、AI要約におけるブランドのメンションをモニタリングする新しい可視性トラッキングツールと統合する必要がある。多くのエンタープライズSEOプラットフォームには現在、AI可視性モジュールが搭載されており、マーケターは自社コンテンツが生成型検索結果にいつ、どこで表示されるかを把握できる。

レポートも進化させるべきである。トラフィックやクリック数に重点を置くのではなく、価値の高いクエリ内での可視性、表現の正確性、そして引用されたコンテンツに結びついた感情に焦点を当てよう。これらの指標は、マーケティング活動と認知度、評判、そして好感度を結び付ける。

Pew Research Center(世論調査や社会的トレンドの分析を専門とする米国の調査機関)の調査によると、Googleの検索結果にAI要約が表示されると、ユーザーが結果リンクをクリックする可能性が低くなる傾向があるという。これは、要約内にブランドが登場することで、測定可能なビジネス価値がもたらされることを明確に示唆している。


信頼性とブランドの一貫性を維持する

新たなプラットフォームへの可視性が広がるにつれ、正確性と信頼性への期待も高まっている。検証可能で体験に基づいたコンテンツを公開するブランドは、回答エンジンへの掲載率が向上する。これは、デジタルトラストの次の段階である。

経営幹部は、公開するすべてのコンテンツをブランドの信頼性を示すシグナルとして扱う必要がある。コンテンツの品質、著者情報、そして明瞭さは、アルゴリズムがコンテンツを信頼できると判断するかどうかを左右する。信頼できる情報、構造化されたフォーマット、そして一貫したメッセージングは、AIが生成した回答にブランドが表示された場合、その評判を高めることにつながる。


リーダーシップの使命

CMO(最高マーケティング責任者)は今、可視性の意味とその測定方法を、企業の成長を反映する形で再定義している。議論はデジタルパフォーマンス指標から市場における権威性を示す指標へと移っている。

効果的なリーダーシップを発揮するために:

  • クリック前にブランドの影響力を捉える、優れた可視性指標を実現する
  • マーケティング、分析、コミュニケーションを調整して、AI主導の検索結果でブランドがどのように表現されるかを監視する
  • 信頼性、信用、関連性を中心にパフォーマンスに関する議論を再構築する

次世代のマーケティングでは、「認知されるか」、「信頼されるか」、そして「選ばれるか」という最も重要な要素を測定する者が有利になるだろう。


プレゼンスこそが今、パフォーマンスを決定づける

ゼロクリック検索はエンゲージメントの喪失ではない。可視性を再定義するものだ。あなたのインサイトが人々の読む回答に反映されれば、あなたのブランドは永続的な認知度を獲得する。

今、競争優位性はトラフィックではなく、引用にある。可視性、正確性、そして信頼性に投資する組織こそが、デジタル成長の次の波を牽引するだろう。


※当記事は米国メディア「Martech」の11/4公開の記事を翻訳・補足したものです。