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AI検索においてブランドの評価を守り、管理するためには何を意識するべきか

AI検索においてブランドの評価を守り、管理するためには何を意識するべきか

マーケティング
2025/08/19

AI検索は、ブランド発見の形を大きく変えつつある。AIによる回答にブランド像を定義されてしまう前に、自らの存在を積極的に管理する方法を紹介しよう。


消費者がブランドを発見し、関わる方法は根本から変化している。今や何百万人もの人々がAI検索プラットフォームに瞬時の回答や推奨事項を求めてアクセスしており、ブランドの可視性と評判は、AIが生成した回答の中でどのように言及、表現されるかによって、ますます左右されるようになっている。

このパラダイムシフトにより、ブランドは従来のSEOテクニックだけに頼ることができなくなった。ブランド自身の直接の関与や制御なしにAI検索によって一方的に定義されることを避けるために、この新しい「ゼロクリック環境」における自社の存在感を積極的に管理する必要がある。

AI検索プラットフォームとLLM(大規模言語モデル)がブランドをどう捉え、表現するかは、周辺的な懸念ではなく、ブランドと評判の管理の心柱なのである。

 

AIはすでにブランドの物語を形作っている

LLMは、オンライン上の表現に基づいてブランドに対する理解を深める。これは、古くなった、不正確な、または否定的なコンテンツが存在すれば、ブランドイメージに大きな影響を与え、信頼を損ない、最終的に潜在的な顧客を失う可能性があることを意味する。

ユーザーは、不正確または誤解を招くような内容のAIの回答に遭遇することが多い。ネット上で急成長中のキーワードやトレンドを発見する分析プラットフォームExploding Topics(自社や競合サイトやページの調査や分析をするためのSEO対策ツールを提供する米国企業Semrushが所有・運用)による最近の調査では、回答者の42.1%がGoogleの「AIによる概要」(AI Overviews)で上記のような問題を経験し、16.78%が「安全でないまたは有害なアドバイスに遭遇した」と回答している。

同調査によって、もうひとつの傾向も明らかになった。40%以上のユーザーは、「AIによる概要」から情報源の資料にアクセスすることが「ほとんどない」もしくは「まったくない」のである。つまり、ブランドがAIの回答で最初に誤って表現されてしまった場合、AIが参考にしたページを参照して内容を確認することや、さらに調べてみるなどして、情報が修正される機会はほとんどないということだ。

要点は何か。

ブランドは、AIが情報を学習し、表示するすべてのチャネルにおいて、一貫性がある肯定的なメッセージを保つため、オンライン上の物語を積極的に管理する必要がある。これにより、ブランドが入力や制御なしに定義されることを防ぐことができる。

 

ブランドの評判が危機に瀕しているのはなぜか

積極的な戦略がなければ、AI駆動型の検索でブランドが誤って解釈されたり、完全に見落とされたりするリスクがあり、次のような重大な問題につながるおそれがある。


不正確または否定的な描写

AIモデルは膨大なデータセットから情報を統合するため、学習に使用するデータに、ブランドに関する古い、不正確なあるいは否定的な内容が含まれていれば、それがそのままAIが生成する回答に反映される可能性がある。ユーザーは、「AIによる概要」で「不正確または誤解を招く内容」、「重要なコンテキストの欠如」、「偏ったまたは一方的な回答」さらには「安全でないまたは有害なアドバイス」を経験したと報告している。


物語のコントロール喪失

AIモデルがデータを「再加工」して会話的な回答を作成すると、ブランドの物語が誤って伝えられ、評判に悪影響を与える可能性がある。つまり、ブランドが意図したメッセージではなく、AIの語る内容によって定義されてしまうことを意味する。


目に見えない影響と失われた可視性

ブランドがAI検索で言及されない、または正確に表現されていない場合、顧客は競合他社の製品やサービスを見て、選択してしまう可能性が高くなる。AIの回答は「ゼロクリック」(クリック不要)な性質であるため、従来のSEO指標で真のブランド影響力を追跡できなくなる。これは、ユーザーがAI経由でブランドを発見し、後に直接サイトにアクセスする場合があるため、アトリビューション(成果への貢献度測定)が難しくなるためである。


信頼の喪失

「AIによる概要」は便利ではあるが、ユーザーからの信頼度は低く、82%の人が何らかの疑念を抱いていると報告されている。ブランドが信頼性に欠けると見なされるAIの回答と関連付けられた場合、ブランドそのものへの信頼に悪影響を及ぼす可能性がある。

この例では、価格情報がHoka(フランス発祥で現在は米国のスポーツシューズブランド)の公式サイトではなく、古いサードパーティの情報源から引用された。ChatGPTは誤った価格を打ち消し線で訂正したが、それでも内在する信頼リスクが浮き彫りになった。


コミュニティ、権威、肯定的な言及を通じてブランドシグナルを強化する

オンライン上でブランドについて言及される場所であればどこでも、メッセージ、説明、ポジショニングを標準化して、すべてのAI駆動型プラットフォームで物語を明確に強化することが重要である。


よく引用されるWebサイトをターゲットにする

LLMが頻繁に参照するReddit(米国発祥の掲示板形式のSNS)、Quora(米国のQ&Aプラットフォーム)、信頼できるニュースメディアなどのサイトで、自社のブランドが言及されるよう積極的に取り組むべきである。これらのコミュニティに参加し、有益な情報を提供することは、AIの認知度を大幅に向上させる効果が期待できる。


デジタルPRとインフルエンサーチャネルを活用する

AIが業界やテーマに関して頻繁に参照するメディアを特定し、これらの媒体で肯定的な報道を追求すると良い。メディア、インフルエンサー、業界の有力者との良好な関係を築くことは、価値ある文脈的なブランド言及につながる可能性がある。


本物のレビューとユーザー生成コンテンツを奨励する

LLMは本物の議論を重視するため、満足している顧客に詳細で正直なレビューを投稿してもらうことが、ブランドへの肯定的な感情を高めるうえで有効である。測定可能な成果があれば、さらに効果的である。


これらのサイトにおいて、すべての製品情報が最新であることを確認した上で、ブランドに関する議論を積極的に監視し、関与する必要がある。データを使用する場合は、テスト方法に関する詳細を明記し、簡潔で断定的な、バランスの取れた表現を心がけることが望ましい。


構造化された「ベスト」リストを活用する

ベストリスト形式は、ブランドや製品の関連性を強固にする。リストを明確な構造で整理し、選択プロセスを説明し、一般的な検索行動に沿った「ベスト」の評価を提供すること(例:「予算が限られているフリーランスに最適」)。

セマンティック・チャンキング(短く、明確にラベル付けされたセクション)と再現可能な構造を使用することで、AIが情報を効率的に解析し抽出しやすくなる。


より幅広いコンテンツの公開を試みる

製品だけでなく、業界全体をカバーする独立したサイトを構築しよう。信頼できる専門知識、実証済みの経験、権威ある洞察を強調することで、LLMやAI検索エンジンからの信頼を獲得しやすくなる。調査やコンテンツをYouTube向けの動画形式に再利用したり、米国に本社を置くMediumのような公開サイトを活用して、リーチを拡大し、メッセージを補強することも有効である。


GoogleのAIによる概要で最も引用されるドメイン

Googleの「AIによる概要」で最も頻繁に引用されている上位10ドメインは、ブランドが一貫した掲載を狙うべき代表的なサイト例である。


AI
の可視性を高めるためのコンテンツの改善方法

AIクローラー(Webサイトを巡回して情報収集するプログラム)がコンテンツを解析できない場合、それは単に別の情報源または競合他社に移動するだけである。この点を踏まえると、自社独自のチャネルや掲載が確実な外部媒体において、AIがコンテンツを解析可能にする技術や構造を活用することが不可欠である。


明瞭性とAIの可読性を考慮した構造

AIモデルは、明確で直接的な回答を提供するコンテンツを好み、多くの場合、構造化された形式を重視する。そこで、FAQ、箇条書き、段階的な手引書、表などを使用すると良い。コンテンツが自然言語の見出しを使用して、明確で簡潔なセクションに整理されていることを確認しよう。


具体性とデータを優先する

曖昧な表現を、具体的な統計データ、専門家のコメント、ケーススタディの結果に置き換えると、AIシステムが容易に抽出・引用できるようになる。著者プロフィールに資格や実績を記載すると、AIシステムに権威を示すことができる。


意図と視聴者に合わせてコンテンツをカスタマイズする

ユーザーが抱える具体的な質問、特にロングテールな(回数は少ないが無視できない)質問に答えるコンテンツを作成し、最初から完全な回答を提供する。LLMは高度にパーソナライズされた応答を提供できるため、特定のユーザープロファイルや検索意図と一致するコンテンツが言及される可能性が高くなる。


有用性を重視

Googleの既存のE-E-A-T(「Experience(経験)」「Expertise(専門性)」「Authoritativeness(権威性)」「Trustworthiness(信頼性)」)原則は、ここでも概ね当てはまる。特に競合他社が対応していないニッチなトピックや複雑な課題に特化して、オリジナルで役立つコンテンツを作成することが望ましい。研究に基づく洞察とソートリーダーシップコンテンツ(専門知識や洞察を共有するためのコンテンツ)を発信することで、引用を獲得し、権威を強化することができる。

また、ツールやテンプレート、フレームワークを作成する際は、明確で記述的なタイトルを付け、その使用方法や価値を説明する補足コンテンツを添えることが非常に効果的である。

 

堅固なオンライン評判管理を確保する


感情と情報源の管理

主要なプロンプトにおけるブランドの感情とこれらの感情を後押しする情報源を追跡する必要がある。これにより、強みを増幅し弱点を補うために、ターゲットとするトピックと掲載場所を計画することができるのだ。


危機管理

ブランドの提供価値を包括的に見直し、重要な機能やポジショニングについて、整合性のあるトークトラック(話すべき内容や流れを整理した「話の軌道」)を定義することが重要だ。不正確または好ましくないコンテンツの影響に迅速に対処し、被害を最小化するための危機管理戦略を策定することが必要である。


モニタリングと対応

おそらくこれが最も重要だ。否定的なフィードバックを放置して雪だるま式に膨らませ、不要な関係性を形成されないように注意しなければならない。ブランドに関するオンライン上の議論を継続的に監視することが大切だ。レビューやフィードバックに対して、肯定的なものも否定的なものも、迅速かつ戦略的に対応することが求められる。一貫したメッセージを伝えることが肝要である。

例として、米国の寝具メーカーPurple Innovationは、subreddit(Redditの機能で特定のトピックについて議論するサブフォーラム)を活用して、顧客や潜在顧客に迅速に対応している。これにより透明性の高い体験を提供できるだけでなく、Redditの高い引用率を活用して、AI検索上でブランドの物語とメッセージを強化する効果も生んでいるのだ。

 

AI検索をリードするか、それともAIに定義されるか

AI検索は、ブランドの発見と調査のための主要なチャネルとして急速に普及しつつある。データでは、AI検索からの訪問者は、LLMから事前に多くの情報を得ているため、非常に価値が高いことが示されている。

リスクは明確だ。ブランドがAIに言及されない時や、明確に引用されない場合は、急速に存在感が薄れ、競合他社に市場シェアを奪われる危険性がある。さらに、AIがサードパーティの情報源から古い情報や不正確な情報を取得してしまうと、間違った描写をし、ブランドへの不信感につながる可能性がある。したがって、これらの情報源の追跡と最適化は不可欠である。

検索の未来はAI主導だ。今、適応するブランドが、可視性をリードするだろう。積極的に自社のAI物語を形作るか、それともAIに定義されるままにするのか。

Semrush AI Optimizationを活用し、この新たな時代をリードし、AI検索が推奨するブランドになろう。


※当記事は米国メディア「MarTech」の8/14公開の記事を翻訳・補足したものです。