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マルチモーダルな世界において、顧客にブランドを見つけてもうために考えるべきこと

マルチモーダルな世界において、顧客にブランドを見つけてもうために考えるべきこと

マーケティング
2025/08/06

機械読み取り可能で、文脈に富み、あらゆる検索方法で発見可能なブランドを構築しよう。


AIは今や、あなたの言わぬブランドマネージャーである。

マーケティングのリーダーたちは新たな課題に直面している。それは、機械が読み取り、コンテキストを理解し、あらゆるカスタマージャーニーにおいて存在感を見出すことができるブランドアイデンティティを構築することである。

あなたのブランドは、人間と人工知能のエコシステム全体で一貫性を維持する必要がある。この記事は、この混乱を明確かつ実行可能なステップへと導くものである。そして、各セクションは、実践的な指針となっている。

 

1.顧客の検索行動を分析する

機械によるインテリジェンスは、顧客との多様なタッチポイントにおけるブランドの可視性に影響を与えている。顧客は今や、自ら撮影した画像で検索し、動画で自身の世界を見せながら、ChatGPTのようなインターフェースと対話して、必要なものを探している。この変化は、検索に関する専門知識の有無に関わらず、すべてのマーケティングリーダーに影響を及ぼしている。

出典:Exploding Topics(ネットで急成長するキーワードやトレンドを早期に発見するためのツール)

  • マルチ = 複数の、多くの
  • モーダル = モードまたはモダリティ(何かを行う方法)

「マルチモーダル検索」とは、ChatGPTやその他多くの大規模言語モデル(LLM)のように、複数の入力形式を同時に処理するシステムを指す用語である。

要約すると、テキスト、画像、音声、動画といった入力を個別ではなく、一体的に処理するということである。

この変化により、マルチモーダル検索戦略は、バックグラウンドを問わず、すべてのマーケティングリーダーにとって不可欠なものとなっている。

あなたのオーディエンスがオンラインで検索する際に、画像、テキスト、音声、動画をどのように利用しているかを理解しよう。あなたのビジネスにとって最も重要な組み合わせは何だろうか?

 

スナップショットからソリューションへ:今日の顧客の検索方法

Google検索の責任者であるLiz Reid氏によると、ビジュアル検索は拡大を続けているという。

  • 「Lens検索(Googleが提供する視覚検索ツール)は現在、検索における最も急速に成長しているクエリタイプのひとつであり、若年層のユーザー(18~24歳)が最も積極的にLensを利用している」。

経営陣はビジュアル検索の理論的な重要性を認識しているが、現実世界の顧客行動パターンを理解することが、戦略的なリソース配分の決定に不可欠である。

以下の行動マッピングは、顧客がビジュアル検索をどのように購買決定に組み入れているかを示している。

主要なアクション

  • モダリティの特定:ユーザーが、画像、テキスト、音声、動画を使ってどのように検索しているかを理解する。GoogleやChatGPTがこれらのデータを提供することを待つのではなく、既存顧客を対象にターゲットを絞ったアンケートを実施しよう。最近のサポートチケット(顧客からの問い合わせやサポート依頼を記録・管理するための仕組み)やDMを100件抽出し、「写真が添付されたメッセージ」や「『これを見たのは…』という表現を含むメッセージ」といった基準で分類しよう。
  • ユーザージャーニーマッピング:ユーザーがモダリティ全体でどのようにジャーニーを開始し、切り替え、終了しているかを追跡する。たとえば、買い物客は商品の写真を撮影し、音声アシスタントにレビューを尋ねた後、価格を調べるためにテキスト検索に切り替えることがある。
  • プレゼンス監査:これらのジャーニーにおいて、自社ブランドがどこに表示されるか(または表示されないか)を評価する。分析ツールを使用して、AIがキュレーションした検索結果における可視性のギャップや機会を特定する。モデル全体でLLMにおけるブランドのメンションも追跡すること。


2.商品やパッケージは現在、ランディングページとして機能している

パッケージングと商品は、Web向けに最適化された視点で設計する必要がある。

商品とパッケージングは、あなたのランディングページである。AIが理解し、文脈に合わせて解釈できる必要がある。機械が読み取れなければ、消費者が購入を検討する重要なタイミングで、あなたのブランドの存在は認識されなくなるのだ。

マルチモーダルな発見向けにコンテンツを最適化するためのヒント

  • パッケージングには、明瞭なサンセリフ体(先端の装飾をもたない欧文書体)を使用し、テキストと背景のコントラストを高めよう。
  • LLMがパッケージングのどの箇所を「読み取り」、文脈を理解するのに苦労したかを分析しよう。
  • 効果的な実践テストとして、色の組み合わせがグレースケールでどのように見えるかを確認しよう。
  • コンテンツが、よくある問い合わせや顧客の質問に適切に答えるものになっていることを確認しよう。

 

3.センチメント(感情)の要素

ターゲットとなるオーディエンスに合わせたトーンや感情的な文脈でコンテンツを作成しよう。テキスト、動画、画像の感情の基準を確立すること。

現在のブランドイメージの感情的なトーンはどのようなものだろうか?その感情的なトーンは、商品の意図する感情と一致しているだろうか?

出典:Google Cloud Visionデモ

 

4.ブランドのためのビジュアルナレッジグラフを構築する

マルチモーダルAIは、あなたの商品だけではなく、あなたがその周囲に配置したすべてのものを認識する。これらの隣接する物体は、機械があなたの価格帯、ターゲット顧客、そしてそれらの文脈を推測するのに役立つ。

成功するブランドは、自社イメージをキュレーションしている。商品やサービスが特定のライフスタイルを対象としている場合、ブランドが発信する写真や動画のそれぞれについて、ビジュアルナレッジグラフ(人間の知識をグラフ構造でデータ化したもの)を意図的にキュレーションする必要がある。

出典:Myriam Jessier氏(SEOとパフォーマンスマーケティングのコンサルタント兼トレーナー)による「Image OCR best practice」

 

5.部門横断的なチームコラボレーションを促進する

マルチモーダルAIは一過性のものではない。これは、テクノロジーの新しい活用方法と新たな顧客行動の変革を促すトレンドである。

マーケティングリーダーとして、あなたの目標は、マーケティング、SEO、コンテンツ、デザイン、エンジニアリングの各チームを、マルチモーダル検索の目標に向けて連携させることである。これには、アセットの作成、タグ付け、品質管理(QA/Quality Assurance)のための新たなワークフローの確立が含まれる。

チーム全員が「同じ言語」でコミュニケーションできるよう、マルチモーダルSEOとAIの基礎知識をチームにトレーニングしよう。

出典: Exploding Topics

次のステップ

  • 役割の明確化:コンテンツ、SEO、デザイン、データチームそれぞれの役割を定義する。
  • トレーニングとスキル向上:各チームがマルチモーダル検索について理解すべき内容を整理する。
  • アセットの作成、レビュー、最適化のためのワークフローテンプレートを共有する。


6. 重要な指標を追跡する:測定、評価、そして反復

定量的・定性的なフレームワークを活用して、新たな成功指標を定義する。また、検索プラットフォーム、ユーザー行動、そして新たなトレンドを監視する。

イノベーションと測定可能なビジネス成果の間のフィードバックループを構築することが鍵となる。

具体的な次のステップ

  • キーワードではなく、引用を追跡する。LLMモデル全体でブランドがメンションされる頻度と場所を監視し、デジタルフットプリント(インターネット上での個人のオンライン活動によって残される、追跡可能なデータや情報の痕跡のこと)の全体像を把握する。
  • ソーシャルメディアだけでなく、LLMにおいても、トーンとセンチメントを分析し、オーディエンスの認識を理解する。
  • 信頼性と文脈的な位置づけを確認する:ブランドが、どこで、どのようにメンションされているかを分析する。

 

7.信頼性の維持:倫理観、アクセシビリティ、ブランドセーフティを組み込む

AIがあなたの情報の信頼性を理解できるようになれば、そのコンテンツを見つけて、それを合成した回答に活用する可能性が高まる。

AIは、ユーザーからのマルチモーダル入力を受け入れるだけでなく、自らマルチモーダルコンテンツを検索・統合し、回答を構築する。

大規模言語モデルに適切なブランドの「燃料(コンテンツ)」を与えるためには、すべてのマルチモーダルコンテンツがアクセス可能(代替テキスト、キャプション、字幕、読みやすい構造)であり、倫理的に取得され、プライバシーや著作権の基準に準拠していることが重要となる。

 

メディアはメッセージである

メディア理論の先駆者として知られるMarshall McLuhan氏は、「メディアはメッセージである」という有名な言葉を残した。LLMはメディアとして、あなたのブランドストーリーを形成している。AIは今や、ハリウッドスターや有名なソーシャルメディアインフルエンサーのようなブランドアンバサダーとして機能しているのだ。

AIが検索を主導する時代においては、どんなに認知度の高いブランドであっても、その可視性が自社の価値に合っていることを確認する必要がある。

ユーザーが視覚、画像、音声、テキスト、そしてリアルタイムでの体験を通じて検索が行われる世界において、成功するブランドは、あらゆるアセットやプロセス、そしてチームを、「発見可能性」を中心に設計していくだろう。


※当記事は米国メディア「MarTech」の7/25公開の記事を翻訳・補足したものです。