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スタートアップ企業Cimulate、よりスマートなAIアシスタントでオンラインショッピングを近代化

スタートアップ企業Cimulate、よりスマートなAIアシスタントでオンラインショッピングを近代化

マーケティング
2025/07/28

会話型AIアシスタントは、堅苦しいキーワードベースのショッピングシステムに取って代わり、よりスマートで自然なインタラクションを提供する。


会話型AIはeコマースでより大きな役割を果たしているが、多くのデジタルショッピングアシスタントはまだ不十分である。使いにくいポップアップや、一般的な応答、しばしば的外れとなる堅苦しいキーワードベースの検索に悩まされている。

最近の調査によると、AIチャットツールの約半数(48%)が、顧客の問題を解決できなかったり、顧客の意図を正確に理解できなかったりしている。小売業者にとって、真のチャンスは、切り離されたチャットボットではなく、商品発見をサポートするAIにある。より有能な会話型ショッピングアシスタントは、顧客のニーズ、商品のコンテキスト、ブランドの声をリアルタイムで理解することで、パーソナライズされたレコメンデーションを提供することができる。

米国のスタートアップ、CimulateのCEOであるJohn Andrews氏は、AIショッピングアシスタントの不振を解決する鍵は、キーワード依存から脱却することにあると考えている。彼のプラットフォームは、堅苦しいチャットボットのスクリプトと単純化された検索ロジックを、よりダイナミックで意図を意識したエクスペリエンスに置き換えている。

「私たちは25年間、キーワードを使うよう、Googleに教育されてきた。今、私たちが可能にしているのは、買い物客が探しているものをより自由な形で表現する能力である」と彼は語った。

ブライダルシャワー用の商品を探す場合でも、雨が降る可能性のある屋外での結婚式のために何かを探す場合でも、消費者はコンセプトを入力してEnterキーを押すだけだ。AI搭載アシスタントが状況に応じた結果を返すため、型にはまった回答ではなく、より自然でパーソナライズされたインタラクションが可能になる。

キーワードトリガーに頼るのではなく、小売業者は自然言語による質問を処理し、関連性のある適切な回答を返すことができるようになっており、これによってキーワードに縛られたインタラクションの限界を超えることができる。

 

よりスマートなAIがオンラインショッピングを変える

Cimulateの生成AIプラットフォームは、企業が主要なビジネス目標に沿って顧客体験を向上させるのに役立つ。その結果、クリックごとに、より関連性の高い収益性の高いエンゲージメントを実現できるのだ。Cimulateのテクノロジーにより、Webサイト訪問者は検索を開始するために適切なキーワードを推測する必要がなく、自由に質問することができる。

たとえば、Andrews氏はシャツの写真を見せて、「このシャツは気に入っているのだが、袖が破れてしまった。似たようなものを探してほしい」と話しかけると、アシスタントが利用可能なソースをスキャンし、類似点や相違点に関するコンテキストとともに選択肢を返すという。

「『フランネルシャツ』とだけ言って、それに応じて表示される商品リストを精査していくようなものではない」と、改良されたAI搭載ショッピングエージェントがどのように機能するかについて彼は付け加えた。

 

未来のデジタルショッピングモール

消費者が複数のオンラインストアをスクロールする必要がなくなる未来を想像してみてほしい。AIショッピングエージェントが、検索、比較、そして選択肢のキュレーションといった作業をバックグラウンドで処理するのだ。

消費者のショッピングエージェントは、店舗のAIカタログエージェントと直接購入リクエストについてやり取りし、希望の商品を探し、価格と商品詳細を比較し、最新の結果リストを買い物客に提供する。消費者は商品を選択し、ショッピングエージェントに購入手続きを委任する。

Andrews氏は、近い将来、AIエージェントはあらゆる問い合わせを解釈し、会話形式で応答できるようになるだろうと示唆した。さらに重要なのは、その理解を商品カタログエージェントや小売検索エンジンに伝え、タスクを完了させることだ。

今日の小売業者はすでに、大規模言語モデル(LLM)ベースのシステムに接続されたAPI(異なるアプリケーションやソフトウェアを他のサービスやソフトウェアと連携するためのインターフェース)を介してeコマースを処理するために、Cimulateのプラットフォームを使用している。

「それこそが、当社のプラットフォームに接続された小売顧客向けWebサイトを買い物客が訪れた際に、適切な商品を表示するために当社が提供しているものだ。これは、キーワード検索システムでは実現できない」と、彼は述べ、この仕組みは未来的に聞こえるかもしれないと認めた。

「しかし、正直なところ、実現はそう遠くない。今後6~9ヶ月以内には、このような会話型AIエージェント体験を提供していないWebサイトを見つける方が難しくなるだろう」と、彼は予測した。

Andrews氏は、ほぼすべての小売Webサイトが、顧客の質問に魅力的な方法で答えるショッピングアシスタントの早期導入版を導入するだろうと予測した。

「ユーザーエクスペリエンス(UX)がどのようなものになるかは、まだわからない。ただ、Webサイト全体のパネルに統合することに重点が置かれると考えている。ポップアップボックスでエージェントに『注文はどこにありますか?』と尋ねたり、『パスワードをリセットしたい』といったやり取りをしたりするような機能だけにとどまるわけではない」と、Andrews氏は語った。

  

商品検索は依然として課題

Andrews氏によると、会話型AIは顧客のニーズを理解する上でますます効果的になっている。より大きな課題は、正確な商品検索結果を提供することであり、これは現在も改善が進められている。

「これは、カスタマーサービスチャットボットのようなルールベースのエンジンではない。それらは、非常にルールに基づいて動作している」と、彼は、それぞれの基盤技術の主な違いについて説明。「カスタマーサービスチャットエージェントは、ユーザーエクスペリエンス全体に組み込まれる予定だ」と付け加えた。

同社は、顧客がショッピング体験中にデジタルパーソナルアシスタントに安心して頼れるような、強力なショッピングアシスタントを小売業者に提供することに注力しているという。

  

AIショッピングツールは実店舗に取って代わることはない

Andrews氏は、AIショッピングアシスタントの台頭を、多くの人が「実店舗が時代遅れになるかもしれない」と考えていたAmazonの黎明期に例えている。

「人々は今でもWebサイトを閲覧するのが好きで、本当に魅力的な体験を求めている。トレンドが何であるかを知りたがっているのだ」と、彼は続けた。「AIエージェントはそれをすべてやってくれる。しかし、誰もがすべてのユースケースでそれを望んでいるわけではない」。

Andrews氏は、ショッピングエージェントは実店舗での体験に取って代わるものではないと強調。オンラインと実店舗の選択肢は、互いに補完し合うべきであり、競合するべきではないのだ。

「人々は買い物が大好きだ。そして、やはり店舗に行って商品を実際に触ってみたいと思っている」と、彼は言った。

  

AIは小売業界の購買行動にどのように適合するか

Cimulateは過去2年間、キーワードレスのショッピング検索システムの開発に取り組んできた。小売テクノロジー分野で25年の経験を持つAndrews氏は、企業がこれらのイノベーションに対応する方法に変化が生じていると感じている。

以前、企業からは、このアプローチは興味深いが、短期的なロードマップには含まれていないと言われていた。

「今は誰も私たちにそうは言わない。誰もが今まさにこの課題に取り組んでおり、誰にとっても最優先事項なのだ」と、彼は語った。Andrews氏は、AIを活用したショッピングエージェントの市場は非常に競争が激しく、キーワードに依存しない検索ソリューションを追求している企業はCimulateだけではないことを指摘。それでも、CimulateがAI導入の課題解決において先進的だと考えている。重要な違いの一つは、同社が「買い物客の個人情報を保存していない」ことだ。

「私たちは、小売業者から個人情報を受け取ることを望んでいない。そのような個人情報は保存せず、モデル構築にも使用しない」と、彼は述べた。同社のプラットフォームは、顧客の意図を可能な限り正確に解釈するよう設計されているが、個人情報を保存することはない。彼は、個人情報に関する懸念が根強く、特に個人情報がAIモデルに埋め込まれ、後に漏洩するのではないかという懸念があることを認識している。



※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の7/17公開の記事を翻訳・補足したものです。