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マーケターが活用すべきAmazon Adsの5つの機能

マーケターが活用すべきAmazon Adsの5つの機能

マーケティング
2025/07/09

Amazon Adsの次のような機能を見落としていないだろうか。Amazonアトリビューション、Prime Videoなどの最新機能について学び、データに裏付けされた効果的なキャンペーン実現のためにより上手く活用しよう。


Amazon Adsはツール、インサイト、パフォーマンス向上のための包括的な巨大エコシステムであるが、その多くはブランドやマーケターに活用されていない、または知られていないのが実情だ。そこで本記事では、ブランドがAmazonから最大の利益を得られるように、2025年に注目すべき主要な機能、ツール、統合機能を紹介する。古いものもあれば、新しいものもあるが、いずれも認知度とコンバージョンの向上に効果的である。


1. Amazon
で扱っていない商品の広告(非エンデミック広告)

「非エンデミック広告」とは、その小売サイトで商品を販売していないブランドが広告を出稿する仕組みをいい、これにより、ブランドはそのプラットフォームの既存の利用者やデータを活用することができる。Amazon、Home Depot (米国の住宅リフォーム向け建設資材、家具、ガーデニング用品などを取り扱う大型小売店チェーン)、Walgreens(米国の薬局チェーン)、Macy’s(米国の百貨店)などの小売業者は、長年の買い物客のデータや行動インサイトを所有しており、顧客の嗜好、習慣、ライフイベントに関する比類なき全体像を提供している。サードパーティのCookieが制限され、データプライバシー規制が強化されるにつれ、「リテールメディアネットワーク(RMN:小売業者が自社のデジタルプラットフォームを活用して広告スペースを提供するサービス)」から得られるファーストパーティデータの価値は急上昇している。

RMNは、保険会社、ストリーミングサービス、教育機関のような非小売ブランドが「予期しないが、関連性の高い環境」で理想的な顧客にリーチするための強力な機会となる。たとえば、新しいファイナンシャルアドバイザーを Amazonで探そうとする買い物客はいないだろう。それでも、買い物客が他の商品を購入する過程で、その人の興味や属性が見えてくる。これはファイナンシャルアドバイザーにとって理想的な見込み客を見つける手掛かりになり得る。

非エンデミック広告の強みは、そのターゲティング能力にある。RMNが、地域、趣味、ライフステージ、最近の購入履歴などの特性によって顧客をセグメント化することで、ブランドはユーザーにカスタマイズしたメッセージを配信し、Webサイトやランディングページに誘導できるのである。

この戦略は検索に取って代わるものではなく、ニーズに先駆けて需要を生み出すことで検索広告を補完するものである。これらの機能は、洗練度と測定の点で群を抜いているクリーンルームソリューション(自社のデータセットと、外部パートナーのデータセットを簡単安全に任意のアカウント上で統合し、照会、分析作業を行えるようにするサービス)である「Amazon Marketing Cloud」の測定ツールによって、さらに強化される。

これは、米国発のビジネス特化型SNSであるLinkedInの登場以来、リード獲得ビジネスにとって最も衝撃的で刺激的な出来事である。小売業者のファーストパーティデータを大規模に、そして人口統計や行動のより深いレベルで検索し、ターゲットを絞り、セグメント化できるという、非常に強力なツールである。


2. Amazon
リテール広告サービス

小売メディアをめぐる盛り上がりとは裏腹に、Amazonが最近開始した「リテール広告サービス」は比較的静かな登場となった。このサービスは、同一 SKU(Stock Keeping Unitの略で、受発注・在庫管理を行うときの、最小の管理単位)のキャンペーンを、複数の小売業者にまたがって一元管理できる集中型プラットフォームとして販売されており、「Amazon の成熟した技術インフラを活用して小売広告の運用を簡素化する」という明確なコンセプトを掲げている。

しかし、初期段階では大手小売業者の参加がなく、代わりに米国の自然派通販サイトiHerbや米国のアジアおよびヒスパニック系食料品ECのSayWee のようなニッチだが商品数量が多いパートナーに大きく依存していた。特にこのサービスはデジタルでの掲載にしか対応しておらず、実店舗や店頭との統合がないため、規模と価値の両方が制限される。

米国の食料品即日配達サービス企業であるInstacartなど他の企業は、デジタル広告プラットフォームCarrot Ads製品を使用して、Thrive Market(米国を拠点とする自然食品やオーガニック食品の会員制オンライン販売)やThe Fresh Market(米国のスーパーマーケットチェーン)などの小規模食料品チェーン全体で同様のモデルをすでに展開しており、最近では、そして最も注目すべきは、Uber Ads(配車サービス「Uber」やデリバリーサービス「Uber Eats」のファーストパーティデータを活用した広告ソリューション)への技術ライセンス供与を拡大していることである。Microsoftも過去に、Advertising Network for Retailers(小売業者向け広告ネットワーク)という類似のソリューションを導入したが、立ち上げ時に十分な参加小売業者を確保できなかったため、このプログラムを終了している。

Amazonの参入はCriteo(フランス)、Koddi(米国)、Epsilon(米国)などの既存のアドテック企業にとってまだ大きな脅威ではない。小売チャネル全体でキャンペーン管理を一元化することは魅力的だが、Amazon版は現在、小売店の規模やオムニチャネル対応といった重要な要素が不足している。より広範な小売業者との提携や実行力の向上が進まない限り、その影響は限定的なものにとどまるだろう。


3. Amazon
アトリビューション

Amazonアトリビューション」は、無料の測定・分析ツール(API:アプリケーション・プログラミング・インターフェース経由でも利用可能)で、ブランドはAmazon以外のマーケティングチャネルがAmazonでの活動にどのように貢献しているかを追跡することができる。ブランドは、商品詳細ページ(PDP)の閲覧、カートへの追加、購入といったユーザーの行動が、どの外部チャネルから来たのかを追跡することができる。これには、たとえば、GoogleやMicrosoft経由のテキスト検索広告、MetaInstagramTikTok経由のオーガニックおよび有料ソーシャルメディア投稿、メール、一部のディスプレイ広告などが含まれる。

これは決して新しいものではなく、ベータ版での運用は数年続き、私が参加した中では最も長いもののひとつだったが、それでも知名度はそれほど高くない。

Amazonアトリビューションプラットフォームでは固有のトラッキングURL(「アトリビューションタグ」と呼ばれる)が生成され、ブランドの外部メディアやキャンペーンに埋め込まれる。買い物客がタグ付けされたリンクをクリックしてAmazonにアクセスすると、その行動が追跡され、元のチャネルにアトリビューションが記録される。

ただし、この機能を利用できるのは、Amazonのブランドレジストリに登録されているベンダー、Amazonのファーストパーティ出品者、サードパーティ出品者のみである。

現在のフォーマットに、制限がないわけではない。たとえば、買い物客が最終的にバリアントを変更して購入した場合や、最初に見ていた商品とは別の商品を購入した場合である(つまり、「元の商品が影響を与えた」という商品ハロー効果やブランドハロー効果のレポートがなく、その影響を計測できない)。その場合、買い物客が最初に検索していた商品が何か追跡できなくなる可能性がある。しかし、買い物客がどこから来たのかという参照元の広告チャネルについては、引き続きAmazonは追跡できる。

私は、MetaからAmazonのPDPにトラフィックを送信するために大金を費やしたにもかかわらず、ただ漠然とした、何の役にも立たない指標を受け取るだけのブランドを数多く見てきた。この分野に投資するのであれば、(外部チャネルからAmazonへの誘導を計測・最適化できる米国のプラットフォームであるampdのような)サードパーティパートナーをチェックして、顧客の動線を追跡することをお勧めする。


4. Amazon
プライムデー関連のソーシャルコマース

Metaとソーシャルコマースといえば、プライムデーが近づいている。ただし、今回は特別だ。今年は例年の2日間ではなく、4日間の開催なのだ。

それがソーシャルコマースとどう関係があるのだろうか。大いにある。すでにMetaやTikTokでは、Amazonの出品者やブランド(多くの場合、Amazonインフルエンサー・プログラム経由)から依頼を受けたインフルエンサーが制作した、AmazonのPDPやセール、ブランドのストアページにリンクする商品や限定セールを取り上げたコンテンツが増加している。

これは驚くべきことではない。特にZ世代からの信頼性の高さもあって、今年2025年の米国のインフルエンサーマーケティングへの支出は100億ドルを超えると予想されている。そして、Amazonの広告費は、昨年だけで540億ドルを超えており、その中でインフルエンサーマーケティングの占める割合がより大きくなり、Amazonプライムデーにさらに注力していることに驚きはしない。

TikTok Shop(TikTokアプリ内で商品の発見から購入までをシームレスに完結できるEC機能)は、昨年のようにプライムデーに先駆けて「Deals for You Days」セールを行うだろうか。米国連邦政府の介入がなければ、おそらくそうなるだろう。

他のブランドも負けじと、プライムデー期間中に他の小売チャネルで開催される競合セールイベントを宣伝する可能性がある。そのため、「おすすめ(For You Page)」ページには広告用のレビューや体験談が大量に掲載されることが予想される。そして、ブランドは、ためらわずSNSを積極的に活用して、自社のプライムデー体験を促進するべきだ。


5. Prime Video
とLive Sports(スポーツ中継)

Amazonは、「Prime Video」と「Live Sports」の両方に大きく賭けている。

「Prime Video」はAmazonの定額制動画配信サービスで、映画、テレビ番組、オリジナルコンテンツをオンデマンドで提供している。これはAmazonプライム会員の特典に含まれているが、単独でも契約可能で、広告表示ありと広告なしのプランがある。

広告ありのPrime Videoは視聴者数が1億3,200万人以上となり、Amazonのもっとも急成長した広告チャネルのひとつである。コンテンツを提供元であるAmazonが所有しているため、高度な測定や追跡機能を得られる点も強みである。さらに、広告なしプランの利用料金が値上げされるにつれ、そして消費者が広告付きのプランにさらに寛容になるにつれて、広告ありプランの会員数は増え続けるだろう。

「Live Sports」は、他のストリーミングサービスと異なり、Prime Videoのチャンネルカテゴリに含まれており、現在はThursday Night Football(米国において非常に重要なスポーツイベントの一つであり、NFLレギュラーシーズンの毎週木曜夜に放送される全国向けの試合枠)やその他のNFL(アメリカンフットボール)の試合、WNBA(女子プロバスケットボールリーグ)、そして今秋から米国の視聴者向けにNBA(男子プロバスケットボールリーグ)の配信も始まる。英国やインドなど他の国では、サッカーやクリケット、その他の大きなスポーツの大会も視聴可能だ。

さきほど、Amazonの非エンデミック広告を取り上げたが、改めてそれをまとめてみよう。前回、Thursday Night Footballを視聴したとき、どんな広告があったか思い出してみてほしい。Amazonで販売しているブランド以外の広告もあったはずだ。State FarmGeico(どちらも米国の保険会社)の広告もかなり流れていた。この広告環境がいかに大きな影響力を持つかが見えてくるだろう。

Prime VideoとLive Sports という2つのサービスにより、マーケターは、優れたリーチと多様な関心を持つ視聴者にアプローチできる強力な広告展開チャネルを入手できるのである。


結論

ふう!よし、これで最新機能を理解できただろう。取り上げるべきプログラムや機能は他にもある。たとえば、テレワークをしていた従業員が出社するようになっている状況では、音声広告が大々的に復活している。しかし、それらについてはまた後日紹介しよう。今のところ、Amazon Adsの最新プログラムについては、これである程度理解できたと考えてほしい。


※当記事は米国メディア「MarTech」の7/3公開の記事を翻訳・補足したものです。