私たちSemrush(マーケティングツールを提供する米国企業)は、AI検索(Google AI Overviews、GoogleのAIモード、ChatGPT、Claude、Perplexityを含む)が今後数年間で、デジタルマーケティングとSEO業界のトラフィックや収益にどのような影響を与える可能性があるかを調べる調査を実施した。
この調査は、500以上の価値の高いデジタルマーケティングとSEO関連のトピックとサブトピックに基づき、特定の検索用語とプロンプトに落とし込んで行われた。この調査で得られた知見は、デジタルマーケティング業界がAI主導の未来に備える上で役立つ可能性がある。
主な調査結果と、それが人々にとってどのような意味を持つのか、以下に紹介しよう。
AI検索調査から得られた5つの重要な知見
1.2028年にはAI検索訪問者が従来の検索訪問者を上回る
当社の調査によると、デジタルマーケティングやSEO関連のトピックは、2028年初頭までに、従来の検索よりもAI検索からWebサイトへの訪問者数を増加させ始める可能性がある。
これは、あらゆる業界におけるより広範な変化を反映している可能性も高いだろう。
そして、Google検索の標準機能がAIモード(Googleが提供する対話型のAI検索機能)に切り替われば、この移行はさらに早く実現する可能性がある。
AI検索テクノロジーがより身近で利用しやすくなるにつれて、AI検索のエンゲージメントは増加していくと予想される。これにより、ユーザーの従来の検索結果への依存度は低下するだろう。
たとえば、ChatGPTの週間アクティブユーザー数は、2023年10月から2025年4月にかけて8倍に増加し、現在では8億人を超えている。
また、GoogleはChatGPTのようなエクスペリエンスを提供し、従来の検索結果ページを完全に置き換える「AIモード」の展開を開始した。
さらに、Googleは最近、「AI Overviews(AIによる概要、従来の検索結果の上に表示されるAI生成の概要)の利用を拡大した。
ユーザーの習慣が変化するにつれ、多くのクリックが従来の検索からAI検索へと移行するだろう。そして、中には完全に消えてしまうクリックもあるだろう。
つまり、トラフィックの合計は、当初は減少し、その後安定し、徐々に増加する可能性が高いということである。
これは、AI検索が以下の特徴があるためである。
●マーケティングファネルの短縮:AI検索は、ユーザーが必要とする情報の多くを事前に提供することで、ユーザーが複数のWebサイトやページを訪問する必要性をなくすことができる。
●リンクの優先順位を下げる:AI検索は、参照先のブランドやコンテンツへのリンクを必ずしも含めるわけではない。表示されるリンクは、従来の検索よりも目立たない傾向がある。
これが意味すること
AI検索トラフィックは、今後2~4年以内に従来のオーガニック検索トラフィックを追い抜く可能性がある。今すぐLLM(大規模言語モデル)の最適化を始めなければ、競合他社がAI検索結果で優位に立ち、利用可能な露出とアクセスの大部分を獲得してしまう可能性がある。
LLM最適化の基礎は従来のSEOとかなり重複しているが、完全に同じではない。
最初のステップは、LLMにおける自社の可視性を把握することである。
競合他社と比較したLLMの可視性を追跡する強力な方法は、Semrush Enterprise AIOを使用することだ。
このツールは、バイヤージャーニーのさまざまな段階でブランド固有のプロンプトを生成する。そして、これらのプロンプトを用いて、LLM全体における自社と競合他社の可視性とブランドへのメンションを評価する。
たとえば、スポーツソックスを販売するeコマースブランドであれば、「メンズランニングソックスブランド」や「ヨガに最適なソックス」といったプロンプトが表示されるかもしれない。
貴社がエンタープライズ製品を取り扱わない場合は、代わりにSemrush AI Toolkitを使用してAIの可視性を追跡してみよう。
2. 平均的なLLM訪問者は、従来のオーガニック検索訪問者の4.4倍の価値がある
コンバージョン率に基づくと、AI検索訪問者(ChatGPTなどのGoogle以外のAI検索ソースからの訪問者)は、従来のオーガニック検索からの平均的な訪問者の4.4倍の価値があることがこの調査からわかった。
AI検索がすべての人にとって成長する(そして従来の検索は衰退する)中で、AIチャネルは2027年末までに世界中で同様の経済価値を生み出すと予測されており、その後はそれをはるかに上回る成長が見込まれる。
LLM は、ユーザーが意思決定を行うために必要なすべての情報を提供できるため、AI 検索訪問者はコンバージョン率が高くなる傾向がある。
AI検索ユーザーがあなたのサイトを訪れる頃には、既に選択肢を比較検討し、あなたの価値提案を理解している可能性も高いだろう。そのため、コンバージョンに至る可能性は格段に高まる。
さらに、AIによる回答は、まるで個人的な口コミのように提示されるため、従来の検索結果よりも感情に訴えかける力と説得力を持つ可能性がある。
これが意味すること
AI検索の訪問者は、従来のオーガニック検索の訪問者よりも質が高い傾向がある。そのため、AI検索によるわずかなトラフィック増加でも、収益に大きな違いをもたらす可能性がある。
良いニュース: 現在、LLMにおけるブランドの知名度の大部分は、従来のSEO要素に左右されている。たとえば、有益なコンテンツの公開、Webページのクローラビリティ(検索エンジンが読み取れる状態)の確保、ブランドの引用(これは基本的に、実際にリンクされる必要のないブランドの被リンクである)の確保などである。
しかし、さらに一歩踏み込んで、以下のような方法で、AIシステムに自社の価値提案を明確に伝えることができる。
●引用しやすい、または「チャンク(切り出し・再利用)可能」な方法で情報を提示する
●マーケティングチャネル全体で一貫したブランドメッセージを維持する
●LLMが学習する場所にブランド情報を挿入する
●主張を裏付ける、機械読み取り可能な形式のデータを公開する
●ブランドに関するネガティブなセンチメントをオンラインで管理する
Semrush Enterprise AIOは、LLM全体でブランドがどのように表現されているかを表示する。また、このツールは貴社の強みを強化し、弱点を軽減するための直接的な提案も行う。
3. ChatGPT Searchは主に検索順位の低いページを引用
当社のデータによると、ChatGPT SearchがWebページを引用するとき、引用されたページはほぼ90%の確率で、関連するクエリに対して従来のオーガニック検索順位で21位以下にランクされているものである。
また、PerplexityとGoogleのLLMも、従来の検索結果で下位にランクされているページを頻繁に引用する。
しかし、LLMの中には、従来のオーガニック検索順位1位から5位のページを、6位から20位のページを引用するよりも頻繁に引用するものもある。言い換えれば、従来の検索で上位にランクインしても、LLMで引用されるのに役立つ可能性があるということである(または、従来のランクインに役立つ同じ要因が、LLMでのビジビリティも向上させるということである)。
それでもなお、当社のデータは、従来の検索では比較的順位が低くても、LLMで引用される可能性があることを示している。その理由は主に3つある。
第一に、AIシステムは単純に検索順位で21位以下から選択できるコンテンツがより多い。
第二に、AIの検索エクスペリエンスは主に情報を表示するように設計されている。一方、従来の検索体験は主にWebページ全体を表示するように設計されている。
つまり、これは、AIシステムがコンテンツの個別の「塊」の関連性と品質にもっと焦点を当てることができることを意味する。そして、全体的なページエクスペリエンス(読み込み速度やコンテンツの深さなど)にはあまりこだわらない。
第三に、AIシステムは、従来の検索エンジンよりもユーザーの意図をより高度に理解することができる。それは次のような理由からだ。
●自然言語をより効果的に処理する
●会話を通じて文脈を把握する
●長期にわたって各ユーザーを理解する(単純な人口統計情報にとどまらない)
つまり、LLMは、特定のユーザーにとって最良のレスポンスを提供することに集中できる。平均的なユーザーにとっての最良の結果ではなく、特定のユーザーにとっての最良の結果なのだ。
これが意味すること
標準的な検索結果で上位表示することで、ChatGPTやその他のAIシステムで引用を獲得できる可能性がある。そのため、従来のオーガニックトラフィックが減少したとしても、従来のSEOは重要であり続ける可能性がある。しかし、特定のキーワードでオーガニック上位3位以内にランクインすることは、AI検索においてはそれほど重要ではないかもしれない。
当社の調査によると、AIシステムは、非常に具体的なユースケースやオーディエンス向けにカスタマイズされたコンテンツを引用する可能性が高いことが示唆されている。したがって、この種のコンテンツは、今後のマーケティング戦略において重要な役割を果たすはずだ。
たとえば、特定の業種向けにカスタマイズされた製品ガイドを作成したり、サポートチームに寄せられるニッチな質問に回答するブログ記事を作成したりすることができる。
4. Google AI Overviewsで最も多く引用されているWebサイト「Quora」
当社のAI検索調査によると、Quora(ユーザー同士が質問と回答を通じて知識を共有するQ&A型のナレッジコミュニティサイト)はGoogle AI Overviewsで最も多く引用されているWebサイトである。
Redditは2位である。
QuoraとRedditのユーザーは、他のサイトでは取り上げられていないニッチな質問をしたり、回答したりすることがよくある。そのため、これらは非常に特殊なAIプロンプトにとって豊富な情報源となっている。
また、Redditが優れたパフォーマンスを発揮する理由として、GoogleがRedditと提携し、Redditのデータを使用してシステムをトレーニングしていることも考えられる。
以下のグラフは、AI Overviewsで最も頻繁に引用されているドメインの上位20を示している。
これらは権威性の高いドメインであり、従来のオーガニック検索でも高いパフォーマンスを発揮する。
たとえば、Travel + Leisure、Good Housekeeping、NerdWalletのドメインOverviewsレポートを見てみてほしい。
これが意味すること
QuoraやRedditでのマーケティングは、Googleが頻繁に引用しているため、AI最適化戦略において重要な役割を果たす可能性がある。
他の関連性の高い、権威あるWebサイトで取り上げられること(デジタルPRやリンク構築の手法を用いてブランド引用を獲得すること)も、AI検索におけるビジビリティを高める可能性がある。
Semrush Enterprise AIOを使えば、メンションされるのに最も効果的な場所を見つけることができる。
このツールは、分析したプロンプトに対して最も頻繁に引用されているWebページを特定する。また、ブランドがメンションされていないか、好意的なメンションかどうかをフラグ付けする。
5. ChatGPTが引用するリンクの半数はビジネス/サービス系サイト
当社の調査によると、ChatGPT 4oの回答に含まれるリンクの50%は、ビジネス/サービス系のWebサイトへつながっている。QuoraやRedditなどのサイトが、個々のドメインベースでは最もパフォーマンスが高いにもかかわらず、である。
この分布は、他のモデルでも同様であると考えられる。
このことは、LLMが貴社ビジネスに関する回答を作成する際に、Webサイトに大きく依存することが多いことを示している。また、多くの場合、ビジネスWebサイトは話題性の高い情報源であると考えている。
これが意味すること
貴社のWebサイトはAIの回答で引用される可能性が非常に高いが、適切な種類のコンテンツを作成し、LLMに適したものにする必要がある。
成功するための簡単なヒントを紹介しよう。
●品質を重視:検索エンジンと同様に、LLMは特定のオーディエンスや意図に合致する、独自性、有用性、そして権威のあるコンテンツを評価する。
●マルチモーダルコンテンツを作成:マルチモーダルコンテンツは、テキスト、画像、音声、動画などの複数のフォーマットを組み合わせたものである。これにより、AIシステムはコンテンツを解釈し、表示する方法が広がる。
●自然言語処理(NLP)向けにコンテンツを作成:自然言語処理(NLP)は、AIシステムが文章を理解するために使用する手法である。そのため、コンテンツをNLP向けに最適化する必要がある。たとえば、関連するエンティティに言及し、明確な言葉遣いと文法を用い、説明的な見出しでコンテンツを構成しよう。
●比較ガイドを公開:LLM(およびユーザー)が自社のサービスと競合他社のサービスの主な違いを理解できるよう、役立つ比較ガイドを作成しよう。
●クローラビリティを確保:Webサイトのページがクロール可能で、JavaScriptで表示される仕組みになっていないことを確認しよう。多くのAIクローラーはJavaScriptファイルを実行しない。
また、6月16日の週に公開予定の LLM 最適化に関する詳細なガイドにも注目してほしい。
注記
トラフィックと価値の予測は、過去のデータとユーザーの採用率から推定したものである。
AIトラフィック予測の一環として、以下のユーザーの影響をモデル化した。
●リファラーデータのないAIのリンクをクリック(この場合、トラフィックはダイレクトまたは不明として表示される)
●AIの応答を確認した後、手動でWebサイトに移動(この場合、トラフィックはダイレクトなものとして扱われる)
●AIによるメンションを見た後に購買意欲が高まったが、後で他のチャネル(ブランド検索など)を経由してWebサイトを訪問して購入
AIの未来への準備を始めよう
AI検索最適化は、今すぐ知名度を上げるためだけのものではなく、未来への投資なのだ。
LLMは、膨大な量のオンラインコンテンツからパターンを見つけ出して学習する。今日、これらのパターンを形成することに取り組むことで、あなたのブランドは、今後何年にもわたって、より頻繁に、より正確に、より好意的に紹介される可能性がある。
当社の調査によると、AI検索は2027年までに、あるいはそれよりずっと早く、収益とトラフィックの主要な推進力となる可能性がある。
今こそ、行動を起こす時だ。
Semrush Enterprise AIO(エンタープライズ企業向け)またはSemrush AI Toolkit(その他すべての企業向け)を活用して、AIの可視性を追跡し、より強力なビジネス戦略を構築しよう。