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eコマース企業は顧客を理解し、競争に勝ち残るために、どのようにWebデータを活用しているか

eコマース企業は顧客を理解し、競争に勝ち残るために、どのようにWebデータを活用しているか

マーケティング
2025/05/14

あらゆるeコマース業界の企業が、公開Webデータの収集からメリットを得ることができる。その方法を紹介しよう。

 

要点

  • 公開Webデータは、eコマース企業が競合他社を追跡し、消費者動向を把握して、よりスマートな業界特有の意思決定を行う上で極めて重要である。
  • 自社の業界に合わせたWebスクレイピング(Webサイトから自動的に情報を抽出する技術)アプローチにより、企業はリアルタイムの洞察を活用して、価格設定、製品開発、マーケティング戦略に役立てることができる。

eコマース企業が競争で優位に立つためには、データの重要性、特に競合他社がアクセスできる公開Webデータの重要性を無視することはできない。競合他社の価格の追跡であれ、最新の消費者動向の把握であれ、Webデータにアクセスできることは、業種を問わず、企業がより賢い選択をするための力となる。

しかし、必要なデータの具体的な種類やその用途は、業界によって大きく異なる。この記事では、データ収集における相違点と共通点について簡単に説明する。

 

データが必要なのはどの業界だろうか?すべてだ!

あらゆる業界のeコマース企業は、競合他社の動向を監視し、市場での地位を評価し、新たな成長手段を見つけるためにWebデータに頼っている。最近の統計によると、2024年には約25億人(世界人口のほぼ3分の1)が、世界中で消費財のオンライン購入を行っている。この巨大なデジタル市場は、以下のような貴重な公開データの宝庫を生み出している。

  • 価格情報
  • 商品の在庫状況に関するデータ
  • 消費者のレビューとセンチメント
  • 検索トレンドとキーワード
  • プロモーション戦略
  • 市場シェア指標

Webスクレイピングの助けを借りることで、これらすべての、そしてそれ以上の情報を収集し、分析することができる。それでは、さまざまな業界がどのようにWebデータを活用して意思決定を改善し、それぞれの課題を克服しているのか、詳しく見てみよう。

 

家具業界 – 季節ごとの戦略と高額商品

家具業界は明確な季節パターンで動いており、小売業者が在庫スペースを確保するため、1月と7月に大規模なセールが行われる。このピーク時には、価格が10%から最大60%も下がることがあり、買い手と売り手双方にとって重要な時期となる。

業界特有のデータニーズ:

  • 季節ごとの価格動向: クリアランスセールのピーク時に競合他社がどのように値引きを調整するかに注視する。
  • ホリデープロモーション戦略: 大統領の日(2月の第3月曜日)、メモリアルデー(5月の最終月曜日)、レイバーデー(9月の第1月曜日)など、ショッピングがさかんになる大型連休には、家具が値引きされることが多いため、お得なセールをチェックする。
  • 消費者の調査パターン: オンラインからオフラインへのショッピングジャーニーに関するインサイトを得る。たとえば、消費者が購入前に店舗を訪れる回数が減少しているため、有名な「7回の法則(ある商品やサービスについての情報を消費者が7回接触すると、それを購入する確率が高くなるという理論)」は変化しているかもしれない。
  • フロアサンプルの在庫状況: 競合他社が展示品を大幅割引で提供している機会を見つける。

 

ファッション業界 — 急速なサイクルとトレンドの発見

ファッション業界は目覚ましい急成長を遂げており、推計によると2029年までに1兆1,830億ドルに達し、年平均成長率8.94%という驚異的な伸びを示すとされている。この業界の特徴は、速い商品サイクル、絶えず変化するトレンド、そして持続可能性を意識する消費者の増加である。

業界特有のデータニーズ:

  • トレンドの先取り: ソーシャルメディアやレビューデータを精査し、新しいスタイルが主流になる前に発見する。
  • 在庫モニタリング: 競合他社の在庫状況を把握し、需要の高いアイテムを特定する。
  • 持続可能な商品ポジショニング: 競合他社がどのように持続可能性をアピールしているかについてデータを収集する。会計・コンサルティングファームDeloitteが指摘するように、ミレニアル世代の60%、Z世代の59%が持続可能な商品やサービスに追加料金を支払うことを望んでいるため、これは重要なポイントである。
  • ファストファッションの価格設定: 競合他社に先んじるため、価格変動をリアルタイムで監視する。
  • 偽造品の検出: ブランドの評判を損なう可能性のある不正な複製品をオンラインマーケットプレイスで確認する。

 

エレクトロニクス業界 — 技術仕様と製品ライフサイクル

エレクトロニクス業界は、複雑な製品への対応、めまぐるしい技術革新、短い製品ライフサイクルなど、特有の課題に直面している。2024年から2031年までの業界の年平均成長率(CAGR)が7.5%と推定されていることを考えると、データに基づいた意思決定がこれまで以上に重要となる。

業界特有のデータニーズ:

  • シリアルナンバーの管理: 一貫性を維持するために、さまざまなプラットフォームで製品仕様を追跡する。
  • 製品ライフサイクルのデータ: 競合他社が最新技術の導入に伴って旧モデルの値引きを開始するタイミングに目を光らせる。
  • 詳細な仕様: すべての技術情報がすぐに入手でき、競争力があることを確認する。
  • 家電製品の価格戦略: 消費者は特に常に価格を比較しているため、高額商品にはリアルタイムの価格インテリジェンス(商品やサービスの価格設定や管理をより効率的・効果的に行うためのシステム)を活用する。
  • 在庫予測モデリング: 過去の販売データを活用し、ライフサイクルの短い製品の在庫を微調整する。

 

食品・飲料業界 — 健康トレンドと原材料の透明性

食品・飲料部門は着実な成長を遂げており、2024年の6兆2,000億1,100万ドルから2032年には9兆8,075億4,000万ドルに達し、年平均成長率(CAGR)5.9%で成長すると予測されている。

この業界では、食品安全規制、食生活のトレンド、そして消費者の健康への懸念に対応するため、専門的なデータ収集が必要である。

業界特有のデータニーズ:

  • 原材料の透明性: 競合他社が栄養情報をどのように表示しているかを注視することは極めて重要である。調査によると、アメリカ人の半数以上が包装前面(FOP)ラベルは食品や飲料の購入に影響すると回答しており、4分の1はこの影響が大きいと考えている。
  • 新たな食生活のトレンド: 企業は、オーガニック、持続可能な、または植物由来の製品に対する消費者の新たな嗜好を見極める必要がある。
  • アレルゲン表示の取り組み:競合他社がアレルゲン表示をどのように遵守しているかを監視することは、特に世界の2億2,000万の食物アレルギー患者にとって重要である。
  • サブスクリプションモデルの導入: 競合他社がどのようにサブスクリプションオプションを導入しているかを分析する。食品のサブスクリプションは、2025年までに4,420億ドル規模のグローバルなサブスクリプション経済に貢献すると予測されている。
  • オムニチャネルの統合: 競合他社がオンラインとオフラインの体験をどのように連携させているかを理解することがカギとなる。

Webデータの収集は、あらゆる分野のeコマースにとって画期的なことであるが、必要な情報の種類やその利用方法は業界によって大きく異なる。特定の業界に合わせたWebスクレイピングアプローチの助けを借りることで、企業はリアルタイムの洞察を活用し、価格設定、商品開発、マーケティング戦略にそれを活用することで、他社との差別化を図ることができるのだ。

eコマースが世界規模で成長を続けるなか、公開Webデータを最大限に活用する方法を知っている企業は、市場の動向を理解し、消費者のニーズを予測し、最終的には自らの地域でより大きな市場シェアを獲得するのに最適な立場にいることができるだろう。


※当記事は米国メディア「Entrepreneur」5/1公開の記事を翻訳・補足したものです。