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「画像」は金なり。ビジュアル(視覚的要素)がビジネスにもたらす影響とは

「画像」は金なり。ビジュアル(視覚的要素)がビジネスにもたらす影響とは

トレンド
2025/02/06

今日の視覚主導のデジタル世界では、画像はもはや見映えだけのものではなく、消費者が購入を決断する理由となっている。顧客が、長いテキストを読むことに時間を費やしてくれることは、めったにない。人々の集中できる時間は短くなり、情報が溢れる中、ビジュアルコミュニケーション(視覚伝達)の力を活用するリーダーは明らかに優位に立っているといえる。まさに、「”画像”は金なり」なのだ。

研究によると、脳が複雑な物体を視覚的に処理するのにかかる時間は、通常0~0.5秒の範囲内であるという。そこで、素早く注目を集め、メッセージをより効果的に伝えるために、優れたビジュアル(視覚的要素)へ投資することの重要性が強調されている。リーダーのプレゼンス向上や複雑な戦略の簡素化から測定可能なビジネス成果の促進まで、戦略的な視覚媒体は「あれば便利」なものから、「ビジネスで成果をあげるための重要な能力や行動特性(ビジネスコンピテンシー)」へと進化している。

適切に選択され、フォーマットされたビジュアルをコンテンツに組み込むと、顧客を会話に引き込むためにまず注目を集めるところから、顧客行動に影響を与えるところまで、購入に至るまでのあらゆる点でオーディエンスにリーチすることができる。米国に本部を置く世界最大の会計事務所Deloitteは、Googleとの共同研究によって、読み込み時間を0.1秒(10分の1秒)短縮すると、ユーザージャーニーのすべての段階に影響を与える可能性があることを発見した。eコマースにおいては、コンバージョンが8.4%上昇し、平均注文額が9.2%増加することを意味する。


優れた視覚媒体がもたらすビジネスへの影響

優れた視覚媒体は、次のような好影響をビジネスにもたらす。

・関心を惹く

魅力的な画像、魅力的な動画、双方向のグラフィックは、特に動きがあると、ユーザーのスクロール速度が遅くなり、会話やコンテンツに引き込みやすい。

・迅速に伝える

人間の脳はテキストより画像を処理する速度が速いため、視覚媒体はメッセージを瞬時に伝える最適な方法である。時間はかつてないほど貴重になっているため、閲覧者は多くの時間や精神力を費やすことなく理解できる画像付きのメッセージを高く評価し、さらにそれはメッセージの内容がより記憶に残りやすくなる。

・優れたデザインでブランドを補強する

ロゴ、アイコン、ブランドらしいグラフィックが統合されていると、会社のブランド認知、親近感、忠誠心が高まる。実際、Webページのデザインとユーザーのエンゲージメントに関する調査で、テスト参加者からのフィードバックの94%がWebサイトのデザインに関するものであった。反対に、サイトのコンテンツ関連のフィードバックは6%しかなかった。

・SEOを促進する

ビジュアルが最適化されたWebサイトでは、直帰率が低くなり、滞在時間が長くなる。これは、Googleなどの検索エンジンにとって価値あるコンテンツであることを示している。この肯定的なユーザー体験はSEOランキングを強化し、視認性が高まり、サイトの自然なトラフィックが増加する。さらに、画像の読み込み時間は、Googleがページランキングの決定に使用する指標の1つであるCore Web Vitalsに直接影響を及ぼす。


ビジュアルはどのように消費者のエンゲージメントや行動に作用するのか

消費者は魅力的なビジュアルを含むコンテンツに関心を持ち、記憶する可能性が高く、最終的にはページ内でのエンゲージメントからページ外での行動へとつながるという調査結果がある。強力なビジュアルによって誘発される消費者行動は次の通り。

・共有可能性

前述したように、強力なビジュアルのコンテンツは共有されやすく、ブランドのオーガニックな口コミが拡散される。

・コンバージョン

関連性の高いビジュアルで強化されたコンテンツはエンゲージメントを高め、オンライン、オフライン両方でコンバージョンを強化し、売上を大幅に伸ばすことができる。

・購入意思決定

ビジュアルは、感情を刺激し、購買欲求を生み出すことで、購入意思決定に影響を及ぼす重要な役割を果たす。マーケティングによっては、製品の特長と機能を強調するビジュアルは、消費者が安心して「購入」ボタンを押す決断の後押しをする。


eコマースにおけるビジュアル最適化のための重要な戦略

ビジュアルを最適化するために、eコマース企業が使える重要なアクションがいくつかある。そのうちのトップ4を紹介する。

1. 読み込み時間を短縮するためにWebページの重さを最適化する

Webページのデータの大半を画像が占めることが特に多いため、ページの軽量化は読み込み時間の短縮には不可欠である。米国デトロイトに設立されたライフスタイルブランドShinolaは、画像サイズを小さめにすることで、ページ全体の重さを50%削減することができた。これによって、サイト上のほとんどの画像のレンダリング時間(イメージや動画を生成する際に必要な時間)が10%から15%短縮され、ページの読み込み時間が平均で1秒短縮された。

2. モバイル用の画像最適化を優先する

Webトラフィック全体の約54%がモバイルデバイスによるものであるため、モバイル優先の画像最適化を優先することが重要だという最近の調査結果がある。フランスの高級ファッションブランドのZadig&Voltaireは、モバイル用の画像最適化によって、ページの読み込み速度が66%向上した。

3. 次世代フォーマットを活用してファイルサイズを小さくする

AVIF(「AV1 Image File Format」の略)やWebP(Googleが開発した新しい静止画像フォーマット)のような次世代画像フォーマットは、JPEGやPNGのような従来のフォーマットに比べて大きな利点がある。というのも、これらの新しいフォーマットは圧縮率を高めながら、画質を損なうことなくファイルサイズを小さくすることができるのだ。

世界最大の金融ニュースサイトのひとつである日本経済新聞は、これらのフォーマットを活用して画像ファイルサイズを最大38%削減した。

4. 画像処理を自動化して効率化

大量の画像を扱う企業にとって、自動化は業務効率を維持し、貴重なリソースを解放するための秘訣となる。エシカルに作られた(社会や環境への影響を考慮して責任を持って作られた)婚約指輪、結婚指輪などの高級ジュエリーを適正価格で提供する英国の宝石店、Queensmithは、約18万枚の画像を管理するWebサイトを運営しており、毎月2,500万枚の画像依頼がある。

Queensmithは、時間がかかる画像処理を一部自動化することによって、画像プロセスの変革に成功し、顧客にシームレスで応答性の高いエクスペリエンスを実施している。

Queensmithのコンテンツチームは、面倒な画像のトリミングやサイズ変更を行う代わりに、各画像について高解像度の画像をひとつ作成し、さまざまなユーザー環境に合わせてフォーマットやサイズを動的に変更できる仕組みを導入している。


視覚媒体の影響についての最終考察

ユーザーがあなたのWebサイトを気に入るかどうか、つまりサイトにとどまるか離脱するか、気持ちをまとめるのにかかる時間は約0.05秒である。「本を表紙で判断してはいけない」とよく言うが、Webページに関して言えば、ビジュアルで判断されることは間違いないだろう。


※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の1/28公開の記事を翻訳・補足したものです。