中国越境ECで2大SNSのWeibo・WeChatでどのように消費者にアプローチし、初期認知を獲得してブランディングしていくのか

 

ここ1年程度で急激にEC業界のバズワードに躍り出た“越境EC”。既に一部の企業では越境ECに本格的に取り組んでおり、昨年の独身の日(11月11日=ダブルイレブン)にはユニクロTmall内全体でも4位となる115億円の売上を1日で作るなど、日本企業も徐々に中国国内でのプレゼンスを高めつつある。また中国サイドから見てもEC全体の売上の40%が越境ECだというデータもあるほど、中国国内でも海外から商品を購入することは日常と化してきているのだ。しかし、そのような中でもやはりまだ越境ECに本格的に着手できない日本企業が多いのが現状だ。そこで今回は、中国国内で企業も商品も全く知られていない状態から、WeiboWeChatという2大SNSを活用してどのように売上を作っていくのか、初期認知の獲得とブランディングについて考えていく。

※当記事はWeibo・WeChatへの広告配信サービスを提供するアライドアーキテクツ社から情報提供を受け、中国国内における2大SNSを活用した初期認知とブランディング手法のうちの1つを解説した記事である。

 

<参考>

アリババの怒涛の買収攻勢はアジアのEC業界をどのように変えていくのか

そもそも越境ECってどんなモノがどんな理由で売れるのか - データから見るポテンシャルと傾向

 

 

中国におけるWebマーケティングに関わる5つの特性

 

中国市場は日本国内の市場と大きく異なる部分もあり、同じ部分もある。特にWebマーケティング領域について、その特性を5つ見ていこう。

 

CtoCサービスからBtoCサービスへ

今、日本ではBtoCのECサービスからメルカリなどをはじめとするCtoCのECサービスが盛り上がってきているが、中国では真逆の経緯を辿っている。そもそもオンライン上で最初に活性化したのはCtoCのECサービスTaobaoであり、TmallなどのBtoCサービスは後発だ。

アリババが提供するCtoCサービスTaobao

しかしここ数年でCtoCからBtoCへ中国の消費者は徐々にシフトしてきている。この背景には2つの要素が絡んでいると言われている。1つ目は国策の要素だ。CtoCサービスでは国はそのサービスが盛り上がっても税収が増えないため嬉しくない。そのためBtoCサービスを活性化させたい国の意図がある。2つ目は中国国内でも徐々に問題視され始めてきている偽造品の問題だ。CtoCサービス経由では消費者は常に偽造品の不安を持ちながらの購入となるが、BtoCでは企業から購入するため、消費者の安心感が増えるのだ。

 

<参考>

ECモール・マーケットプレイスで流通する偽造品を撲滅できるか - 国内外の取り組みから見える3つの方策

 

モールの絶対優位性

日本においては楽天Amazonなどのモールも勢いがあるが、独自店舗や本店と言われるモール以外の店舗も相当数存在し、それなりの存在感を醸し出している。しかし、中国においては、モールが圧倒する。その中でもTmallJDが2強となっており、この2つのモールのどちらかに店舗もしくは商品を置くことが出来ないと、ほぼ中国国内の消費者にリーチすることは不可能であるといってもいい状況だ。

アリババが提供するBtoCモールTmall(天猫)

Tmallと2大モールといわれるJD.com(京東)

この背景には中国国内において独自ドメインを取得すること、そのドメインでEC事業を営むことのハードルの高さが挙げられる。資本金などの表面的な規定だけでなく実際には様々な制約があるようだ。また、そのような状況で消費者も検索エンジンでモノを検索するのではなく、モール内でモノを検索することからスタートすることが慣習化しているのだ。

 

<参考>

世界を席巻出来るか、中国・日本・韓国のBtoC向け巨大ECモール - 天猫tmall、楽天市場、Gmarket

 

モールとSNSの関連性

ご存知のように中国では政府の介入により、FacebookTwitterという中国国外のSNSサービスの利用は制限されている。その代わりにWeibo(微博)WeChat(微信)という2つのSNSが台頭。Weiboは中国版のTwitterのこと、WeChatは中国版のLINEと考えてもらえれば分かりやすい。そのWeiboのマンスリーアクティブユーザー(以下MAU)は2015年Q3において2.22億人、WeChatのMAUは2015年Q1において5.49億人となっており、その数は凄まじい。

中国版TwitterといわれるWeibo(微博)

中国版LINEといわれるWeChat(微信)

そしてこれは日本では全く考えられない特徴だが、それらの2大SNSからECサイトへのリンクにはある制約がかかっている。WeiboとTmall・Taobaoのアリババ系が紐付き、WeChatとJDが紐付いている。この紐付きは仲が良い、というレベルのものではなく、WeiboからJDへのリンクはNG、WeChatからTmall・TaobaoへのリンクはNGというように、非常に厳しいもの。そのため、どちらかのSNSだけにリーチすれば2大モールにリーチ出来るということはなく、2大モールにリーチするには、2大SNS共にリーチする必要があるのだ。

 

オンライン上でのターゲットの考え方

中国では長らく人口の急激な増加を避けるために一人っ子政策が行われていた。その影響で今の20~30代の多くは一人っ子だ。このことは、その両親はその一人の我が子に投資を集中させ、その祖父母も一人しかいない孫に投資を集中させることを意味する。そのため特に1980年代生まれ以降のターゲットがオンラインにおいては非常に重要となっており、この世代のユーザーを1人獲得することは4~5人のユーザーを獲得したのと同じ効果があるといわれている。

 

KOLの影響力

KOLとはKey Opinion Leaderのこと。もう少し分かりやすく説明するならば、SNS上で多くのフォロワーや影響力を有する素人の有名人(インフルエンサー)だ。中国では企業が発信するものよりも一般人が発信するものの方が信頼を得やすいというバックグラウンドがあるようだ。そのためKOLが非常にクールだと思われており、認知度も高く、ECへの影響力も強く持っている。中国ではこのような、日本では「ステマ」とも受け取られる手法がカルチャー的にも全く問題なく受け入れられているため、KOLに紹介された商品はオンラインを通じて売上を上げることが可能となる。そのため、多くの企業はKOLを活用し、商品の認知度を高める施策を行っている。そしてKOLはそこで生計を立てているのだ。また、一般的に中国ではアフィリエイトという概念がないため、KOLの支払いは掲載課金となる。多くのフォロワー数や多くの成果を挙げた実績があるKOLの掲載料が高額になるのは言うまでもない。このようなKOLと企業のつながりは日本の感覚からすると理解することが難しい部分もあるが、これは中国のWebマーケティング市場におけるユニークな部分である。

 

 

初期認知獲得とブランディングステップ

 

このような中国におけるWebマーケティングの特性を考慮し、日本企業が中国国内で2大SNSを活用した初期の認知獲得とブランディングを行うための5つのステップを見ていこう。

 

売れるモノとメッセージを準備する

まず、当たり前に聞こえるが中国で売れるモノとメッセージを準備することからはじめる。既に国内である程度の売上を作っているものでも構わないが、日本では効果の高かった訴求メッセージが中国では全く反応が出ないケースもある。特に中国ではその商品による効果が明確に分かりやすいものが受け入れられる。非常に中国的といえばそれまでだが、少し見た目に分かりにくいが抜群に効果のあるモノよりも、見た目に効果が分かりやすいものが好まれる。例えばペットが苦しくなく気持ちよくなりストレスが減る首輪より、可愛いペット服の方が効果が分かりやすい。場合によっては日本では少しやり過ぎで避けられる表現が必要となるケースもあり、その商品による効果が数秒で分かる動画などを用意することが必要となる。

 

出店・出品する

認知を獲得し、モノを売るのであれば、実際に中国の消費者が買いやすいところに商品を置く必要がある。Tmall、JDなどに代表されるモールも中国国内企業向けだけでなく、TmallグローバルJD Worldwideなどの海外企業向けのモールの整備も進んでいるので、可能な限り出店や出品を行っていく。中国国内のこれらのモールに出店するにあたってサポートや出店代行をしてくれる企業、出店はしなくても商品を出品してくれる企業など様々な形態のサービスがあるので活用していきたい。

Tmallグローバル(天猫国際)

JD Worldwide(京東全球網)

<参考>

中国向け越境ECに踏み出す際に活用したい代行サービス - 素早く円滑に越境ECを開始するために

 

マーケティング目的を決める

中国国内で何も認知がない状態から売上を目標に掲げるのは時期尚早だ。まず認知を獲得するために、2大SNSを活用し、目に見える成果を得ることを目的としていくのがいいだろう。例えば、フォロワーを5,000人集めるのか、15人に記事を書いてもらうのか、など分かりやすい目標を掲げていきたい。

 

WEIQにてKOLをピックアップ

上述したKOLに商品を紹介してもらうことが重要になってくるが、KOLによって特徴がある。Weiboに多くのフォロワーを有しているKOL、美容関連で評判が高いKOL、地域特性を持っているKOLなどだ。そのためマーケティングの目標を達成するために、どのKOLにアプローチするべきか検討する必要がある。KOLへのアプローチは、WEIQという中国最大の広告ネットワークを介して行うことが一般的だ。

WEIQ

WEIQは60万以上のWeibo・WeChatのアカウントを管理しており、ターゲットや商品の特性に合わせてKOLをピックアップして配信打診してくれる。打診を受けたKOLは、Weibo・WeChat上で指定されたテキスト・写真・動画・QR・リンクなどを投稿するのだ。日本では一見考えにくい仕組みが中国では非常に一般的となっており、2大SNS上で露出を行う上では最も重要な施策となる。日本国内からでも依頼を行うことが可能となっている。

アライドアーキテクツ社が提供するWEIQの日本の窓口

 

繰り返し投資しブランディングする

KOLが投稿してくれたからと言って、すぐに効果が現れるケースもあるが、そうでないケースもあるだろう。また、それだけでは、目標としている売上に届くケースも少ないだろう。そのため、KOLを使った取り組みを継続して行い中国国内の認知度を徐々に引き上げていきブランディングすることが初期では重要となってくる。中国国内で得た売上はしばらくはブランディングのために投資をするくらいの覚悟で認知を獲得していく取り組みを続けていきたい。一度認知をしっかりと獲得できると非常に大きな成果が得られるのは言うまでもない。

Weibo上でのKOLの投稿事例

 

 

Weibo・WeChatを活用し中国で全く知られていない状態からどのように売上を作っていくのか

 

中国でも日本と同じくECで売上を上げるためにはSNSの活用は重要である。しかしここで説明したように、日本とは異なる特徴がいくつかある。このような市場特性をしっかり理解してアプローチすることは成功のためには不可欠となってくるだろう。特に、KOLによる紹介が受け入れられていること、TmallとJDそれぞれにはWeiboとWeChatがそれぞれ紐付いていて相互のリンクがNGとなっているなど、日本のカルチャーからするとなかなか理解できない点も多いだろう。また、日本的な曖昧な成果が見えにくいモノ、奥ゆかしいモノより、成果が見た目で分かりやすいモノが売れやすいというのも重要な示唆だ。

中国市場はとっつきにくく、特にSNSで認知を得るのは至難の業という理解があるかもしれない。しかしこのような市場特性を理解して、真摯に中国国内向けの商品とメッセージ開発を行ってアプローチすればそれほど難しくない市場と考えることもできるのではないだろうか。日本の企業や商品がさらに中国国内で受け入れられて市場を大きく開拓していく時代もそう遠くないところまで来ているのではないだろうか。今後のさらなる越境EC市場の活性化に期待したい。